空頂黒幘(読み)くうちょうこくさく

精選版 日本国語大辞典 「空頂黒幘」の意味・読み・例文・類語

くうちょう‐こくさく クウチャウ‥【空頂黒幘】

〘名〙 天皇皇太子元服時、加冠の前に用いるかぶりもの。頂辺をあけた黒の幘帽(さくぼう)の意で、黒絹製の天冠一種江戸時代繁文(しげもん)の羅を山形に作り、帽額(もこう)正面につけ、額にあて後ろで結ぶ。
新儀式(963頃)四「皇帝於南殿北廂内調御髻訖皇帝着空頂黒幘、服欠掖御衣、出着於御座

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デジタル大辞泉 「空頂黒幘」の意味・読み・例文・類語

くうちょう‐こくさく〔クウチヤウ‐〕【空頂黒×幘】

黒絹製の天冠てんかんの一種で、天皇・皇太子の元服のとき、加冠の前に着けるかぶりもの。菱文ひしもん刺繍ししゅうをしたうすもの三山形さんざんがたに作り、下縁にひもをつけて額に当て、後ろで結ぶ。

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改訂新版 世界大百科事典 「空頂黒幘」の意味・わかりやすい解説

空頂黒幘 (くうちょうこくさく)

の一種。天皇および皇太子が元服のときに加冠前につける。《新撰字鏡》に〈比太比乃加加保利(ひたひのかかほり)〉とみえているように,前額部に当てるもので,幘(さく)に冠と同じ羅(ら)をたいらにつけ,頂の部分には何もなく,幘で頭に結びつけるようになっている。平安時代中ごろから用いられるようになり,いまに及んでいる。ただ現制では天皇,皇太子の成年式ばかりではなく親王内親王の成年式にも用いられる。天皇と皇太子のそれは形を異にし,天皇のものは,幘につける羅は1枚になっており,3山となって中央が左右よりも高くなっている。皇太子のものは,羅は3枚に分かれ,そのおのおのに中央に1山があり,この3枚の端の部分が重なり合って中央の1枚が全部前にでている。またこれにつける紋は,江戸時代以前は加冠の者の家紋をつけることになっていた。
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世界大百科事典(旧版)内の空頂黒幘の言及

【元服】より

…太政大臣が当たり,太政大臣がいないときにはとくに任命される。理髪の役は加冠に先立ち,空頂黒幘(くうちようこくさく)(薄物を二重にして花形に作り,紫の組紐を左右に付けた頂のない冠)を脱がせ,加冠後櫛(くし)で鬢(びん)を理する役で,左大臣もしくはこれに準ずる者が奉仕した。能冠は初めて空頂黒幘を頭に加える役で,内蔵頭が当たる例が多い。…

※「空頂黒幘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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