竪穴式石室(読み)タテアナシキセキシツ

デジタル大辞泉 「竪穴式石室」の意味・読み・例文・類語

たてあなしき‐せきしつ【×竪穴式石室】

古墳の頂きから掘り下げた穴の周囲板石を積んだ石室。棺を収めたあと天井石をのせ、土で覆う。3~5世紀の古墳にみられる。→横穴式石室

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「竪穴式石室」の意味・わかりやすい解説

竪穴式石室【たてあなしきせきしつ】

墳墓埋葬施設の一種墳丘の上頂部に長方形の穴を掘り,底に粘土や礫をひき,棺を置き,その4方に割石を積んで壁にしたあと,天井石をのせ,粘土で覆い閉鎖する。日本では,4―5世紀の古墳に多い。
→関連項目桜井茶臼山古墳紫金山古墳石室石人山古墳前方後円墳津堂城山古墳椿井大塚山古墳横穴式石室

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「竪穴式石室」の意味・わかりやすい解説

竪穴式石室
たてあなしきせきしつ

古墳の内部構造の一つ。木棺石棺を被覆するため、まず四壁をつくり、埋葬が終わった段階で天井石をのせて蓋(ふた)をし密封する。四壁は扁平(へんぺい)な割石を小口積みにしてつくることが多いが、河原石を積んだものもある。四壁の外に積石塚のように控えの石積みがあって石室の内壁が崩れないようにくふうされている。石室の幅と長さは、内部に納める棺の大きさに影響され、前期の石室の内法は割竹(わりだけ)形木棺を納めるために狭長で、長さ6~8メートル、幅と高さが1メートルほどのものが多く、中期の石室は長持形石棺や組合せ木棺などを納めるために、長さが3~6メートルとやや短く、幅が2メートルほどで広くなる。石室内に赤色顔料が塗布されていることもある。発生期や前期の古墳に多い構造で、中期まで続き、後期にはほとんどみることがない。ただ関東地方では前期にはみられず、中期になって採用されている。追加して多埋葬できる横穴式石室に比べ、単独葬の埋葬施設である。

[久保哲三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「竪穴式石室」の意味・わかりやすい解説

竪穴式石室
たてあなしきせきしつ

主として日本の古墳時代石室の一種。朝鮮南部にも若干みられる。一般に墳丘の頂部に壙を掘り,四壁に石を積み,その内部に遺体を置いて天井を石でふたをした形のものが多い。一度ふたをして土をかぶせたら外との交渉はないのが通例である。長さ6~8m,幅 1m,高さ 1mぐらいのものから長さ2~3m,幅および高さ 60~90cmぐらいのものまである。壁の石積みには板状の割り石を小口積みに水平に積んだものが多く,底面は粘土床,礫床で,そこに木棺を置いたものが多い。古墳時代の初期からみられ,一般に長さが短くなるほど時代は新しいといわれる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「竪穴式石室」の解説

竪穴式石室
たてあなしきせきしつ

古墳の埋葬施設の一つ。木棺や石棺を保護するため,安置した棺の周囲に石を積んで四壁を造り,天井石(てんじょういし)を横架するが,天井は石ではなく木材の場合もある。日本では古墳の墳頂部平坦面にうがたれた土壙(どこう)内に営まれる。おもに前・中期の古墳にみられ,後期には横穴式石室にとってかわられるが,一部では後期にも使用される。前期古墳では,竪穴式石室の構築自体が埋葬行為そのものであって,横穴式石室のように埋葬に先行して造られたものではない。しかし中期になると竪穴式石室を先に営造し,のちに棺を埋葬するものも現れる。構造上,原則として単独葬である。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

防府市歴史用語集 「竪穴式石室」の解説

竪穴式石室

 墳丘[ふんきゅう]を掘りこんで、石を積み上げてかべを造り、天井を石でふさいだ古墳です。石室[せきしつ]の中にはひつぎを入れます。横穴式石室[よこあなしきせきしつ]とはちがって、石室を再利用することはありませんでした。

出典 ほうふWeb歴史館防府市歴史用語集について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「竪穴式石室」の解説

竪穴式石室
たてあなしきせきしつ

古墳時代前・中期の墓室の一形式
木棺または石棺の周囲に,板状の割石を積んで4壁をつくり,上を天井石で閉鎖し,そのうえに盛土をしたもの。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の竪穴式石室の言及

【石室】より

… 日本の古墳時代の埋葬施設をさす場合,石室は竪穴式と横穴式とに区別される。竪穴式石室は墓壙の中に平面長方形の壁体を築き,納棺後に上部を天井石で閉塞する構造をとる。1室に1体の埋葬が基本で,大きさは,ほとんどが棺によって規定されている。…

【墳墓】より

… 墓室を地下に設け,地上に墳丘を築く場合(マケドニアのフィリッポス王のものと推定される墓,唐の永泰公主墓,新羅の王墓),地表またはそれよりやや低くして墓室を設け,その上に墳丘を築く場合(ヨーロッパ新石器時代~鉄器時代,日本の古墳時代の横穴式石室)もある。日本の古墳の竪穴式石室のように,墳丘を築き頂上から掘り下げて墓室を設けるのはむしろ珍しい。墓室や外まわりに巨石を用いた墓は巨石墳(墓)と呼ばれ,巨石記念物の一種として扱われる。…

※「竪穴式石室」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android