第一銀行(読み)だいいちぎんこう

改訂新版 世界大百科事典 「第一銀行」の意味・わかりやすい解説

第一銀行[株] (だいいちぎんこう)

国立銀行条例にもとづき,第一国立銀行として1873年(明治6)7月,資本金244万円余,渋沢栄一総監役(頭取)で設立された日本最初の銀行で,一般銀行業務のほか国立銀行紙幣を発行し官金出納事務取扱いもあわせ営んだ。とくに韓国においては,1909年10月韓国銀行設立まで中央銀行的役割を果たした。1896年国立銀行としての営業満期到来に伴い,普通銀行として営業を継続し,同年9月(株)第一銀行(資本金450万円)と改称し,新発足した。その後,有力大銀行として発展してきたが,第2次大戦下の1943年4月国家的要請によって(株)三井銀行と対等合併し,(株)帝国銀行を新たに設立し,資本金2億円,店舗数129の日本最大の普通銀行となった。44年8月十五銀行を合併。第2次大戦後金融機関の再建整備に際し,48年1月自主的に帝国銀行を旧第一系と旧三井・十五系に分離する方針が決定され,同年10月分離して(株)第一銀行として資本金10億円で新発足した(同時に新・(株)帝国銀行が設立されたが同行が後に三井銀行になる)。64年8月姉妹関係にあった朝日銀行を合併。69年1月三菱銀行との合併問題が表面化したが,多数反対で白紙還元となった。そして71年10月日本勧業銀行と対等合併して第一勧業銀行となり,日本最古の銀行は新銀行へ歴史遺産を引き継いだ。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「第一銀行」の意味・わかりやすい解説

第一銀行
だいいちぎんこう

日本最初の銀行である第一国立銀行が前身で,1873年国立銀行条例に基づき第一国立銀行として,渋沢栄一の指導のもと三井組と小野組共同出資によって設立,一般銀行業務のほか第一国立銀行紙幣を発行し,公金出納事務も営んだ。 74年小野組破産のため動揺したが,渋沢を頭取として再建に成功。 96年普通銀行に改組し,第一銀行と改称。一方では海外にも進出し,上海支店,ホンコン支店を開設,78年の釜山支店の開設に続いて大韓帝国各地に営業所を設け,韓国政府にも貸付を実施,さらに第一銀行券を発行して 1909年韓国銀行 (1911年朝鮮銀行と改称) 設立まで中央銀行的役割を果した。また 43年には国家的要請によって三井銀行と合併し帝国銀行となったが,48年分離して再び第一銀行となった。 64年朝日銀行を合併,69年には三菱銀行との合併問題が表面化したが実現にはいたらず,71年日本勧業銀行と対等合併し第一勧業銀行となった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「第一銀行」の解説

第一銀行
だいいちぎんこう

第一国立銀行が,1896年(明治29)の国立銀行営業満期とともに改組して普通銀行として発足。頭取は引き続き渋沢栄一(1916年まで)。1905年には韓国の銀行券独占発行の特権をえて事実上の中央銀行となる(09年に特権を韓国銀行に譲渡)。第1次大戦までは預金量国内一を保ち,その後も三井・三菱・住友の財閥系銀行に伍して五大銀行の一つとして金融界をリードしたが,戦時経済下の軍需ブームのなかで地位を後退させた。43年(昭和18)金融統制強化のなかで三井銀行と合併し帝国銀行を設立したが,第2次大戦後の48年に再分離。64年朝日銀行を合併,71年には日本勧業銀行と合併して第一勧業銀行を設立し,国内最大,世界でも最大級の金融機関となり,その後の銀行合併の先駆となった。さらに2002年(平成14)に富士銀行・日本興業銀行との合併により,みずほ銀行となった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「第一銀行」の解説

第一銀行
だいいちぎんこう

渋沢財閥の銀行
第一国立銀行の後身で,渋沢栄一を頭取として1896年普通銀行となり第一銀行と改称。朝鮮に進出して事実上韓国の中央銀行の地位を占めた。戦時中三井銀行と合併し帝国銀行となった(1943)が,'48年分離。'71年日本勧業銀行と合併し第一勧業銀行となる。

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世界大百科事典(旧版)内の第一銀行の言及

【第一勧業銀行[株]】より

…1971年,第一銀行と日本勧業銀行(略称,勧銀)との対等合併により発足した銀行。略称,第一勧銀,一勧。…

※「第一銀行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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