筋違(読み)すじかい

精選版 日本国語大辞典 「筋違」の意味・読み・例文・類語

すじ‐かい すぢかひ【筋違】

〘名〙
① 斜めに交差していること。また、物の位置、状態や移動のしかたなどが斜めであったり、傾斜したりしていること。はすかい。すじちがい。すじかえ。
※源平盛衰記(14C前)三五「向の岡へ直違(スヂカイ)にと志す」
※俳諧・蕪村句集(1784)春「几董とわきのはまにあそびし時 筋違にふとん敷たり宵の春」
② 正しい筋道からはずれていること。正しい方向とは異なっていること。
※応永本論語抄(1420)微子第一八「今天下いづくも邪しますちかいに曲たり」
③ 建築で、地震や台風に対して建物を強くするために、柱と柱の間に斜めにかけわたして固定するもの。〔日本建築辞彙(1906)〕
④ 背中の一部で、灸(きゅう)をすえる場所。脊椎の左右に一か所ずつある灸のつぼで、小児の風邪や、胃腸病予防に効果があるとする。
※仮名草子・浮世物語(1665頃)二「風門(ちりげ)・筋違(スヂカヒ)に灸をしたれば、鬼の如く健かになれり」
⑤ 紋の一つ。二本の直線が斜めに交差している図柄。違い木。
太平記(14C後)一六二つ引両四目結・直違(スヂカヒ)左巴・倚かかりの輪違の旗、五六百流差連て」

すじ‐か・う すぢかふ【筋違】

[1] 〘自ハ四〙 (「筋交(か)う」の意)
① 物が斜めに交差する。また、斜めになる。はすかいになる。
落窪(10C後)二「よしとほめし装束も、すぢかひ、あやしげに出づれば」
源氏(1001‐14頃)常夏「くだりの程、端ざまにすぢかひて、倒れぬべく見ゆるを」
② 斜めに向かい合う。
※枕(10C終)一八四「いかでかはすぢかひ御覧ぜられんとて、なほ伏したれば」
③ 考えや行動が、他のそれと行き違う。そむく。
※浜松中納言(11C中)四「あまり世にすぢかひて、すずろなる山ごもりがちに物せさせ給ひ、ひがひがしきやうなり」
[2] 〘他ハ下二〙 斜めにする。傾くようにする。ゆがめる。
俊頼髄脳(1115頃)「くもでといへるは〈略〉柱をたよりにて木をすぢかへてうちたるをいふなり」

すじ‐ちがい すぢちがひ【筋違】

〘名〙
① はすかいであること。斜めであること。傾斜して交わっていること。すじかい。
曾我物語(南北朝頃)八「鹿矢を打つがひ、よっぴいてはなつ。おっさま、すちちかひに首をかけず、つっとぞいぬきたる」
② (形動) 道理にかなわないこと。条理に外れていること。また、気持や行動にゆきちがいのあるさま。見当違い
洒落本・中洲雀(1777)「おれが所へはだし参をして頼だけれども、是迚(とて)も大きに筋違(スシチガイ)
※大阪の宿(1925‐26)〈水上滝太郎〉一二「そりゃあいけない。君に弁償して貰ふなんて筋違ひだ」
③ 筋肉を、急に動かしたり、または無理な動きをしたりすることによって、いためること。

すじ‐かえ すぢかへ【筋違】

〘名〙 =すじかい(筋違)
※南海寄帰内法伝平安後期点(1050頃)一「角(スチカヘ)に両つの頭(はし)(ひた)めて、対へる処を縫ひ合せよ」

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改訂新版 世界大百科事典 「筋違」の意味・わかりやすい解説

筋違 (すじかい)
brace

建築などの構造体で主要な直線材を四辺形に組み立てる場合,その対角線上に入れる補強材の総称。四辺形を三角形の単位に分割することで骨組みが変形するのを防ぎ,その面に働く水平力を負担する。主として風や地震の力に抵抗するため建物の柱,土台,はりなどからなる耐力壁の補強に用いられる。また床組み面や小屋組みの桁とはりの間に水平筋かいを入れて,外力を耐力壁を含む間仕切骨組みに広く伝達させることもある。筋かいには水平力の向きによって圧縮または引張りの力が作用するので,圧縮力を負担するにはそれの接する柱と同寸または三つ割り以上の太筋かいを用い,引張力にはそれ以下の薄い細筋かいや鉄筋筋かい,平鋼や形鋼を用いた鉄骨筋かいを用いることが多い。小屋組みが桁方向に倒れるのを防ぐために棟を支える真束(しんづか)の間に入れたのを小屋筋かいともいう。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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