管鮑の交わり(読み)かんぽうのまじわり

精選版 日本国語大辞典 「管鮑の交わり」の意味・読み・例文・類語

かんぽう【管鮑】 の 交(まじ)わり

(中国春秋時代、斉の管仲鮑叔牙とは非常に仲がよく、共同商売をした時にも、管仲は分け前を余分に取ったが、鮑叔牙は管仲の貧しいことをよく知っているので一言も責めなかった。管仲は「我を生む者は父母、我を知る者は鮑叔」と言って、二人はますます親密になったという「列子‐力命」、「史記‐管晏列伝」の故事から) 友人としての親密な交わり。仲むつまじい交際をいう。水魚の交わり。
※俳諧・路通真蹟(1688)「老杜の貧文の句にならひて、管鮑のまじはり忘るる事なかれ」

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デジタル大辞泉 「管鮑の交わり」の意味・読み・例文・類語

かんぽう‐の‐まじわり〔クワンパウ‐まじはり〕【管×鮑の交わり】

《中国、春秋時代の管仲かんちゅう鮑叔牙ほうしゅくがが変わらぬ友情を持ち続けたという「列子」力命や「史記」管晏列伝の故事から》非常に仲のよい友人づきあい。

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故事成語を知る辞典 「管鮑の交わり」の解説

管鮑の交わり

友人としての親密な交わり。仲むつまじい交際。

[使用例] 我々の友人知己に対する我々の本心を吐露するとすれば、いにしえの管鮑の交りといえど破綻を生ぜずにはいなかったであろう[芥川龍之介侏儒の言葉|1923~27]

[由来] 「史記かんちゅう伝」に出てくるエピソードから。紀元前七世紀、春秋時代の中国でのこと。せいという国の管仲とほうしゅくの二人は、若いころからよく一緒に行動していました。管仲は何度も鮑叔牙に迷惑をかけることがありましたが、鮑叔牙は管仲のことをけっして非難しようとはしませんでした。後に内乱が起きたとき、鮑叔牙の仕えた主人は勝利して君主となりましたが、管仲の主人は殺され、管仲自身も捕らえられてしまいます。しかし、鮑叔牙が管仲の才能を惜しんで自分の主人に推薦した結果、管仲は命を救われただけでなく宰相となり、斉国繁栄に導きました。管仲は、「私を生んだのは両親だが、私を本当に理解してくれたのは鮑叔牙だ」と述べていたということです。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「管鮑の交わり」の意味・わかりやすい解説

管鮑の交わり
かんぽうのまじわり

管仲(かんちゅう)と鮑叔牙(ほうしゅくが)の交わりの意で、深い友情のたとえ。管仲と鮑叔はともに中国春秋時代の斉(せい)の人で、非常に仲がよかった。若いとき共同出資で商売をし、利益を管仲が余分にとったが、鮑叔は「あれは家が貧しいから」といって非難しなかった。またともに戦いに赴き、管仲は三度まで逃げ帰ったが、鮑叔は管仲を卑怯(ひきょう)者とみなさず、「彼には老母があるからだ」といったと伝える、『史記』「管晏(かんあん)列伝」の故事による。『列子』「力命篇(へん)」には、鮑叔が管仲をよく理解し、その行為について、いついかなる場合にも怒ることのなかったことを、管仲が深く感謝して「私を生んだのは父母であるが、私を知っているのは鮑叔だ」といったと伝える。

[田所義行]

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