築地(東京都)(読み)つきじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「築地(東京都)」の意味・わかりやすい解説

築地(東京都)
つきじ

東京都中央区南西部、隅田(すみだ)川右岸の地区。地名が示すように、明暦(めいれき)の大火(1657)後、埋め立てられた土地で、堀割に囲まれた武家屋敷地などが置かれた。豊前(ぶぜん)中津藩奥平(おくだいら)家の中屋敷もここにあり、同藩の福沢諭吉洋学塾を藩邸内で始めたのが慶応義塾大学前身である。また佃島(つくだじま)の住民が明暦の大火で焼失した本願寺派浜町御坊をこの地に移した(築地本願寺)。現在の建物は1934年(昭和9)に再建されたもので、インド仏教様式の近代建築である。東側に接する明石町(あかしちょう)に1868年(慶応4)外国人居留地が置かれ、築地ホテル館が建てられるなど欧米風の文化・風俗で築地の名が知られた。

 明治以後、築地は海軍用地となり、その名残(なごり)の海上保安庁海洋情報部(旧、水路部)があった(2011年江東区青海(あおみ)へ移転)。南部の東京都中央卸売市場築地市場。通称、魚河岸)は、1923年(大正12)の関東大震災後、日本橋から移転してきたもので、東京の台所として活況を呈した(2018年江東区豊洲(とよす)に移転)。1980年(昭和55)朝日新聞東京本社が有楽町から移転してきた。国立がん研究センター聖路加国際病院(せいろかこくさいびょういん)があり、東京地下鉄日比谷(ひびや)線、都営地下鉄大江戸線が通じる。

沢田 清 2019年6月18日]

『魚河岸百年編纂委員会編『魚河岸百年』(1968・日刊食料新聞社)』『田沼武能他著『築地魚河岸』(1985・新潮社)』『太田愛人著『開化の築地・民権の銀座――築地バンドの人びと』(1989・築地書館)』『中村勝編著『魚河岸は生きている――築地市場労働者の生活社会史』(1990・そしえて)』『班目文雄著『江戸東京・街の履歴書4 銀座・有楽町・築地あたり』(1992・原書房)』『尾村幸三郎著『魚河岸怪物伝――築地市場を創建・隆盛にした人々とその展望』(1994・かのう書房)』『築地居留地研究会編・刊『築地居留地――近代文化の原点』Vol.1~3(2000~2004・亜紀書房発売)』『川崎晴朗著『築地外国人居留地――明治時代の東京にあった「外国」』(2002・雄松堂出版)』『Beretta P-03著『東京築地』(2003・雷鳥社)』『テオドル・ベスター著、和波雅子・福岡伸一訳『築地』(2007・木楽舎)』『森清杜著『「築地」と「いちば」――築地市場の物語』(2008・都政新報社)』『本願寺出版社東京支社編『築地』(2009・本願寺出版社)』『福地享子・築地魚市場銀鱗会著『築地市場 クロニクル完全版1603―2018』(2018・朝日新聞出版)』


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