粉河寺縁起絵巻(読み)こかわでらえんぎえまき

百科事典マイペディア 「粉河寺縁起絵巻」の意味・わかりやすい解説

粉河寺縁起絵巻【こかわでらえんぎえまき】

和歌山県粉河寺千手観音の由来と霊験を描く縁起絵巻。1巻。火災にあい損傷が大きいが,《信貴山(しぎさん)縁起絵巻》と同系技法を示す素朴な描線とこまやかな淡彩による絵が残っている。鎌倉初期の作と推定されるが作者不明。
→関連項目縁起絵粉河[町]粉河寺

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「粉河寺縁起絵巻」の解説

粉河寺縁起絵巻
こかわでらえんぎえまき

和歌山県紀の川市粉河にある粉河寺の本尊千手観音像の造立譚(ぞうりゅうたん)と,その霊験譚1話を表した絵巻。1巻。12世紀後半の制作。類話は1054年(天喜2)に僧仁範が起草した「粉河寺大率都婆(おおそとば)建立縁起」をはじめとし,数種の説話集などに収録される。絵は舞台となる建物や風景を何度もくりかえし描く構成と,対象との距離を常に一定に保つ視点に特徴があり,ほのぼのとした内容の説話を穏やかな筆致で淡々と描く。変化には乏しいが,素朴な味わいがある。火災のため巻頭部を失い,また巻末に至るまで波打つような傷痕が残る。縦30.8cm,横1984.2cm。粉河寺蔵。国宝

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「粉河寺縁起絵巻」の意味・わかりやすい解説

粉河寺縁起絵巻
こかわでらえんぎえまき

和歌山県,粉河寺の千手観音にまつわる草創縁起と霊験説話を1巻の絵巻としたもの。 12世紀後半の作。紙本着色。粉河寺蔵。国宝。巻首部は火災で欠失し,料紙上下に焼痕をとどめる。物語は2説話から成り,前半は猟師大伴孔子古 (くじこ) が千手観音を祀って粉河寺を創建した話。後半は河内国の長者の娘が観音の化身である童子のおかげで重病がなおり,一家仏門に入ったという話。絵はやや古様で,人物,動植物,建物などを淡々と描く。この2説話は,天喜2 (1054) 年の『粉河寺大率都婆建立縁起』に記載されており,本絵巻の祖型となった絵巻も早くから成立していたと推定される。

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