粗繊維(読み)そせんい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「粗繊維」の意味・わかりやすい解説

粗繊維
そせんい

食品を弱酸、ついで弱アルカリと順次煮沸(しゃふつ)したとき、壊れずに残る成分を粗繊維という。1800年代の終わり近く、ドイツのウェンデWeende農事試験場のヘンネベルクHennebergらが、セルロースは動物の胃(酸性)でも腸(アルカリ性)でも分解されずに排泄(はいせつ)されることからヒントを得て定量法を考え出し、この方法の改良法が今日でも用いられている。日本食品標準成分表の繊維は、この粗繊維定量法による。しかし、この方法は、食品中のセルロースとリグニンの一部を、それも精度があまり高くなく定量しているにすぎない。したがって、現在、便秘憩室(けいしつ)病、虫垂(ちゅうすい)炎の予防、さらに糖尿病、虚血(きょけつ)性心臓病、大腸癌(がん)、胆石(たんせき)などの生活習慣病(成人病)の予防に重要と考えられている食物繊維の全部を定量するためには、粗繊維定量法以外の方法を用いなければならない。

[不破英次]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

栄養・生化学辞典 「粗繊維」の解説

粗繊維

 食品,飼料の成分で,希酸および希アルカリ溶液で順次抽出した残りの有機物と定義される.セルロース,リグニン,ヘミセルロースペントサンなどが主たる物質で,単胃動物では不消化物であるが,反すう動物では反すう胃内の微生物により部分的に消化され利用される.本来不消化物量を推定するための指標として用いられたが,近年,この方法で可溶性として測定される物質にも不消化物があることから,食物繊維として,別の定量法が開発され,利用されている.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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