紀伊山地(読み)キイサンチ

デジタル大辞泉 「紀伊山地」の意味・読み・例文・類語

きい‐さんち【紀伊山地】

紀伊半島の大半を占める山地。山容は壮年期地形の険しさを示す。最高峰大峰山にある八剣山はっけんざんで、標高1915メートル。
[補説]吉野・大峰(吉野山吉野水分神社金峰神社金峰山寺吉水神社大峰山寺)、熊野三山(熊野本宮大社熊野速玉大社熊野那智大社青岸渡寺補陀洛山寺那智の滝那智原始林)、高野山金剛峰寺丹生都比売神社丹生官省符神社慈尊院)と、その三つを結ぶ参詣道である大峰奥駈道、熊野参詣道(中辺路なかへち小辺路こへち大辺路おおへち伊勢路いせじ)、高野山町石道ちょういしみちは、平成16年(2004)「紀伊山地の霊場と参詣道」の名で世界遺産(文化遺産)に登録された。

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精選版 日本国語大辞典 「紀伊山地」の意味・読み・例文・類語

きい‐さんち【紀伊山地】

近畿地方、紀伊半島の大部分を占める山地。紀ノ川櫛田川を結ぶ中央構造線以南を東西に延びる。最高峰は仏教ケ岳(八剣山=一九一五メートル)。壮年期の山地で、盆地も河谷、平野もなく、東部の太平洋側斜面は日本最多雨地。スギ、ヒノキの美林が広がる。紀伊山脈。

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改訂新版 世界大百科事典 「紀伊山地」の意味・わかりやすい解説

紀伊山地 (きいさんち)

近畿地方の南半分にあたる紀伊半島にひろがる山地。紀伊山地は西南日本外帯に属し,北から南へ三波川変成岩,秩父帯の中・古生層および四万十(しまんと)帯の白亜紀~第三紀層が帯状に配列している。ほぼ中央に最高峰の八剣(はつけん)山(1915m,別称仏経ヶ岳)があり,その周辺に向かってしだいに低くなっている。山地はドーム状に曲隆し,周囲は海面下に沈降している。曲隆の運動軸は六甲変動の南北方向の軸と平行するものと思われる。紀伊山地を地形区分すると,脊梁山脈大峰山脈を中央に,東の台高山脈,西の伯母子(おばこ)山地が南北方向に平行に並び,その南に果無(はてなし)山脈が東西にひろがる。大峰山脈は石英斑岩などの火成岩類の分布に沿って,八剣山,大峰山(主峰山上ヶ岳,1719m),仏生嶽(ぶつしようがたけ)(1805m),大普賢岳,弥山(みせん),釈迦ヶ岳など標高1700~1900mの高く険しい峰が連なる。東の台高山脈には,大台ヶ原山(日出ヶ岳,1695m),三津河落(さんづこうち)山,経ヶ峰山(経堂塚山)などの峰がある。また西の伯母子山地には,伯母子岳(1344m),護摩壇山などの険しい山がみられる。紀伊山地の尾根や山頂には大台ヶ原山や高野山などのように起伏量が100~300mの小起伏面がみられ,隆起準平原の遺物の地形とみられる。また尾根に階段状の定高性がみられ,山地の隆起に伴う山麓階の形成過程が推定されている。なお紀伊山地の南東部の尾鷲市から那智山にかけて,第三紀層の上を熊野酸性岩と総称される石英粗面岩などの火成岩がおおっており,岩質差による差別浸食が顕著で,熊野酸性岩におおわれた地域は標高約900mの急峻な山体を形成し,周辺には第三紀層からなる低い山地がみられる。紀伊山地を刻む河谷のうち,東西方向の西流する紀ノ川,日高川,東流する櫛田川,宮川は地層に対して縦谷をなしている。これに対し北山川十津川は南流して果無山脈を横切り熊野川となるが,地層に対して横谷をなしている。これらの山地に刻み込む谷の地形は壮年期的様相を示し,谷底には盆地や平野が乏しい。河道は穿入蛇行(せんにゆうだこう)が著しく,環流丘陵の形成がみられる。

 紀伊山地は,年降水量が4000mmをこえる多雨地帯で,気候が温暖であるため,杉などの森林資源が豊富で,吉野,熊野の林業地帯を形成し,紀伊とは〈木の国〉の意である。またこの山地には古来吉野熊野高野山山岳仏教の中心地があり,修験道の行場がみられ,参詣道が発達した。紀南には川湯,湯ノ峰,勝浦などの温泉地が点在し,熊野を中心とした霊場めぐりとともに観光地として多くの人々が訪れている。山地のうち広い面積が吉野熊野国立公園高野竜神国定公園に指定されている。なお2004年〈紀伊山地の霊場と参詣道〉が世界文化遺産に登録された。
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百科事典マイペディア 「紀伊山地」の意味・わかりやすい解説

紀伊山地【きいさんち】

紀伊半島の大部分を占める山地。紀ノ川櫛田川中央構造線以南で,西南日本外帯に属する。北から古生層,中生層,第三紀層が東西方向に帯状に分布,大部分は壮年期地形を呈し,八経ヶ岳(最高峰,1915m),大峰山,山上ヶ岳などがそびえる。十津川北山川は南流,紀ノ川,有田川日高川は西流,櫛田川,宮川は東流する。日本の最多雨地域で豊富な森林・水力資源の開発,吉野熊野国立公園を中心とする観光開発が進んでいる。紀伊山地の霊場と参詣道は2004年世界遺産に登録された。
→関連項目紀伊半島奈良[県]三重[県]和歌山[県]度会[町]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紀伊山地」の意味・わかりやすい解説

紀伊山地
きいさんち

近畿地方南部、紀伊半島を構成する山地。紀ノ川、櫛田川(くしだがわ)を結ぶ中央構造線以南の西日本外帯に属し、地層は北から古生層、中生層、第三紀漸新層と帯状に配列する。地形も地層配列の影響を受け、中央構造線の方向に並行して褶曲(しゅうきょく)山脈が東西走するが、山地中央部では、半島の最高部をなす八剣山(はっけんざん)(1915メートル)、釈迦ヶ岳(しゃかがたけ)(1800メートル)などを連ねる大峰山脈(おおみねさんみゃく)と、その東側の高見山(1248メートル)から大台ヶ原山(1695メートル)を連ねる台高山脈(だいこうさんみゃく)、西側に護摩壇山(ごまだんざん)(1372メートル)などを含む紀和山脈の3列が南北走する。この間を流れる河川もその影響で紀ノ川、有田(ありだ)川、日高川、富田(とんだ)川などは西流し、櫛田川、宮川は東流するが、日置(ひき)川、古座(こざ)川、熊野川(北山川、十津(とつ)川)は南流する。山地は壮年期の険しい山容を示すが、際だった山頂はなく等高性で、大台ヶ原山や高野山(こうやさん)には山頂平坦(へいたん)面があり、山地は全体として隆起準平原の特徴を示している。

[小池洋一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紀伊山地」の意味・わかりやすい解説

紀伊山地
きいさんち

近畿地方南部,紀伊半島を構成する山地。紀ノ川,櫛田川を結ぶ中央構造線以南の西南日本外帯に属し,和歌山県,三重県,奈良県にまたがる。地質は北から古生層,中生層,古第三紀層と順に帯状に並ぶ。山地の中央部は十津川,北山川の谷によって護摩壇山(1372m)を含む大和山脈,八剣山(仏経ヶ岳,1915m)を含む大峰山脈,大台ヶ原山(1695m)を含む台高山脈の 3山脈に分かれる。河川は構造線に従い,紀ノ川,有田川,日高川が西流,宮川,櫛田川は東流,古座川,熊野川はほぼ南流する。山地は壮年期の山容を示し,山地内には盆地や谷底平野などの平地がほとんどない。しかし山頂には大台ヶ原山,高野山などに前輪廻(→浸食輪廻)の平坦面を残す隆起準平原が見られる。河川も日高川や瀞峡のある北山川など先行性の下刻曲流をなすものが多い。この特徴は山地が海に沈む海岸にも現れ,熊野灘には典型的な海岸段丘が発達。海食台地の潮岬には陸繋島の地形が見られる。

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