(読み)やくする

精選版 日本国語大辞典 「約」の意味・読み・例文・類語

やく‐・する【約】

〘他サ変〙 やく・す 〘他サ変〙
① たばねる。つかねる。ひきしめる。しぼりこむ。
令集解(868)田「闕官田為主故。若有借佃者。約公田処
経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉後「希臘の地勢は恰も袋子の中央を約して其両端に物を盛りたるに異ならず」
② 省く。除く。
※菅家文草(900頃)一・仲春釈奠、聴講孝経、同賦資事父事君「是以膺籙受図之貴、非孝無以約左龍
約束する。契約する。ちぎる。ちかう。
※平家(13C前)六「かのむすめ已(すでに)陸士が約せり」
④ 節約する。概略にまとめる。かんたんにする。つづめる。略す。
※童子問(1707)中「王道雖固不一レ仁義両者、然約而論之、則一仁字尽之矣」
⑤ 分数または分数式の分母と分子とを公約数で除して簡単にする。約分する。

やく【約】

[1] 〘名〙
① 約束すること。ちかうこと。契り。契約。
今昔(1120頃か)五「約を受て違へむ事の極て怖ろしければ也」 〔史記‐項羽本紀〕
② ひかえめであること。簡約。節約。
※童子問(1707)中「知其要者、言(げん)必約」 〔史記‐屈原伝
③ 貧窮。困窮
④ 短く簡単にすること。省略。また、省略されたもの。
人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)三「旅宿の雑談をもって峯次郎旅行の前文の約に備るは」
⑤ わりざん。除法。除。〔算法新書(1830)〕
[2] 〘副〙 おおざっぱに目で数えたさまを表わす語。おおよそ。だいたい。あらまし。大約。
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉七「板の高さは地面を去る約一メートルだから」

つづま・る【約】

〘自ラ四〙
① 小さくちぢまる。また、うずくまる。
※石山寺本法華経玄賛平安中期点(950頃)六「皺み(ツヅマ)れること无からしむること、牛の皮を張るが如きが」
※宇治拾遺(1221頃)三「たかき岸の三四十丈ばかりあまりたるうへに、虎、つづまりゐて、物をうかがふ」
② 短くなる。短縮される。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「歳去(ゆ)けば形も衰へぬ。月来れば命も促(ツヅ)まりぬ」
要約されて簡潔になる。まとまる。
浮世草子・好色万金丹(1694)二「このやうに言ひもてゆけば、世界の罪は女郎の身ひとつにつづまりぬ」
期限がせまる。切迫する。
歌舞伎容賀扇曾我(1816)三立「その品を外へ渡しては、つづまるお家の難儀と聞き」

つづまり【約】

[1] 集約し、または、まとめられた結果。終結。
※寄笑新聞(1875)〈梅亭金鵞〉八号「帳尻の約(ツヅマ)り合ぬにて知りぬべし」
[2] 〘副〙 つまるところ。結局。
※大阪の宿(1925‐26)〈水上滝太郎〉四「物の理窟いふものは、教育があらうと無からうとつづまり同じ事やろと思ふとりまんね」

やく‐・す【約】

[1] 〘他サ変〙 ⇒やくする(約)
[2] 〘他サ五(四)〙 (サ変から転じたもの) =やくする(約)

つづ・む【約】

〘他マ下二〙 ⇒つづめる(約)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「約」の意味・読み・例文・類語

やく【約】

[名]
約束。取り決め。「を交わす」「を守る」
短く簡単にすること。また、そのもの。「長大な文章の
約音」に同じ。
[副]数量を大まかに数えるさま。おおよそ。だいたい。「一週間」「一〇万円」
[類語](1協定約束条約約定契約協約結約盟約誓約確約保証公約口約取り決め申し合わせ契り誓い固め指切り/(約定かれこれざっと凡そほぼ程度くらいばかりほどかた内外見当プラスマイナス

やく【約】[漢字項目]

[音]ヤク(呉)(漢) [訓]つづめる つづまやか
学習漢字]4年
ひもで結ぶ。締めくくる。「制約括約筋
ひもで結び目を作り、取り決めの目印とする。広く、約束のこと。「約束約諾違約解約規約契約公約口約婚約条約誓約先約締約売約密約予約
短く縮める。かいつまむ。つづめる。「約音約言簡約集約要約
むだを捨て、全体を引き締める。つづまやか。「倹約節約
あらまし。大体。「大約
共通の数で割る。「約分公約数
[名のり]なり

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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