納屋米(読み)なやまい

精選版 日本国語大辞典 「納屋米」の意味・読み・例文・類語

なや‐まい【納屋米】

〘名〙 近世大坂集散される米のうち他国から廻漕の商人米、および大坂に蔵屋敷をもたない小大名・旗本・寺社領米をいう。〔財政経済史料‐三・経済・商業米商・享保一五年(1730)八月

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「納屋米」の意味・わかりやすい解説

納屋米
なやまい

江戸時代の「蔵米(くらまい)」に対する語で、貢租米以外の商人米をいう。江戸や大坂に集散された米の多くは、各藩の設置した蔵屋敷を経由して売却された(蔵米という)が、蔵屋敷を経由しないで民間の問屋商人らの手により集荷・売却されたものもあった。それを納屋米という。つまり、蔵米が領主の貢租や専売品であったのに対して、納屋米は農民の年貢余剰米などであった。大坂に集散した蔵米は年間300万~400万俵に達したが、納屋米はほぼその4分の1であった。それでも、江戸中期以降、大坂への納屋米の集散はさらに増加したため、1835年(天保6)納屋米を扱う納屋物雑穀問屋が成立している。納屋米の増加は、蔵米を基礎とする領主経済に打撃を与えるようになった。

[土肥鑑高]

『土肥鑑高著『米と江戸時代』(1980・雄山閣出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「納屋米」の意味・わかりやすい解説

納屋米
なやまい

江戸時代の納屋物一つ蔵屋敷を経由して売買される蔵米と違って,民間商人を通じて江戸,大坂などで集散,売買される米をいう。地方で払出した蔵米を買取った商人が中央市場に送った米も同じく納屋米と呼ぶ。納屋米は次第に蔵米を圧迫した。

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世界大百科事典(旧版)内の納屋米の言及

【廻米(回米)】より

…廻着米は蔵元蔵屋敷掛屋商人を通じて売却されたが,米価の低下,大名貸の累積等によってこれら商人が廻米を牛耳るようになった。一方,はじめ少なかった諸藩の積出地等での地払米も増加し,これに農民余剰米を加えた商人米(納屋米)が,米相場を求めて廻米され,早くも元禄期(1688‐1704)には大坂・江戸の米市場は供給過剰となった。享保期(1716‐36)に至ると幕府は米価調節のため大坂・江戸への廻米制限を行うようになった。…

【蔵米】より

…(1)江戸時代,諸藩の蔵屋敷を通じて商品化される米穀。これにたいし蔵屋敷を経由しないで,商人の手によって商品化されるものは納屋米(なやまい)という。各藩で収納された年貢米は,国元において藩主の御用や家臣の俸禄米として支出されたり,城下町で一部払米(はらいまい)されるほかは,大坂や江戸にある藩の蔵屋敷へ蔵米として回送され,そこで藩役人の蔵元もしくは町人蔵元によって販売され,代金は藩の財政収入となった。…

【米屋】より

…米の市場は大坂と江戸が中心であった(米市)。流通米には蔵米(くらまい)と納屋米(なやまい)とがあった。蔵米は領主が徴収した年貢米のうちから,家臣の禄米などを支出した残りを払い下げたもので,大坂には西国,北国の諸藩の蔵屋敷が置かれ,蔵元(くらもと)が売買にあたり掛屋(かけや)が代金を出納した。…

※「納屋米」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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