細やか・濃やか(読み)こまやか

精選版 日本国語大辞典 「細やか・濃やか」の意味・読み・例文・類語

こま‐やか【細やか・濃やか】

〘形動〙 (「やか」は接尾語)
① こまごまとしているさま。
(イ) 細かいさま。小さいさま。微小なさま。
※観智院本三宝絵(984)下「七の物を用るといふは、薪ときよき水と〈略〉こまやかなる灰と楊枝と帷(かたびら)となり」
※泥人形(1911)〈正宗白鳥〉七「夕餐を済まして外へ出た。春雨が細やかに降ってゐた」
(ロ) 地肌地質のきめが細かなさま。
※枕(10C終)二七七「高麗縁(かうらいばし)の、筵青うこまやかに厚きが」
※人情本・春色恵の花(1836)初「肌こまやかにやはらかなれば」
(ハ) (髪などが)繊細で美しいさま。
※彌勒上生経賛平安初期点(850頃)「世尊の首の髪は香潔にして細(コマヤカニ)軟かに潤ひ沢ひて」
② 思いやりや感情をこめたさま。
(イ) 思いやりの気持親愛の気持がすみずみまで行き届いているさま。ねんごろなさま。親密なさま。
蜻蛉(974頃)下「山ごえにものしたりければ、異腹(ことはら)にてこまやかになどしもあらぬ人の、ふりはへたるを、あやしがる」
※仮名草子・好色袖鑑(1682)上「かやうに心をつけ、こまやかに思ふとき、いかでか人のあしからんや」
(ロ) 感情をこめたさま。
源氏(1001‐14頃)胡蝶「兵部卿の宮の、程なくいられがましきわびごとどもを、書き集め給へる御文を、御覧じつけて、こまやかに笑ひ給ふ」
③ こまごまと詳しいさま。緻密なさま。綿密なさま。
徒然草(1331頃)一四一「聖教のこまやかなる理(ことわり)、いと弁(わきま)へずもやと思ひしに」
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後「舅に見付けられた迄の留守中の有躰(ありてい)を精細(コマヤカ)に話した」
④ 細かな所までよく手が届いてすぐれているさま。精巧なさま。精細なさま。
※源氏(1001‐14頃)松風「作り添へたる廊など、ゆゑあるさまに、水の流れも、をかしうしなしたり。まだこまやかなるにはあらねども、住みつかば、さてもありぬべし」
⑤ 繊細で上品なさま。洗練されているさま。
※夜の寝覚(1045‐68頃)二「贈り給へるものの、こまやかにことなるを、日くらして対(たい)の君に見す」
※社会百面相(1902)〈内田魯庵天下太平なる哉「節廻しの細(コマ)やかに味ひあるは」
⑥ 色の濃いさま。
※源氏(1001‐14頃)若紫「鈍色(にびいろ)のこまやかなるが、うちなえたるどもを着て」
⑦ 濃密なさま。
青春(1905‐06)〈小栗風葉〉夏「一室の嬌しい人香に蒸れた濃(コマヤ)かな空気は、窓々を流込む夜風と絶えず入変って」
草木毛髪などが密生しているさま。〔書陵部本名義抄(1081頃)〕
土壌がよく肥えているさま。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)八「瞻部洲の縦広七千踰繕那の地を皆沃ひ壌(コマヤかに)あらしめむ」
こまやか‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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