細井和喜蔵(読み)ほそいわきぞう

精選版 日本国語大辞典 「細井和喜蔵」の意味・読み・例文・類語

ほそい‐わきぞう【細井和喜蔵】

小説家。京都出身。小学校中退後、大正九年(一九二〇東京に出、労働運動にはいる。「種蒔く人」に作品発表。同一二年「悍馬」創刊。同一三年「改造」に「女工哀史」を発表し批評家激賞を得て世に出たが、翌年病死。明治三〇~大正一四年(一八九七‐一九二五

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「細井和喜蔵」の意味・わかりやすい解説

細井和喜蔵
ほそいわきぞう
(1897―1925)

大正時代のプロレタリア作家。明治30年5月9日京都府与謝(よさ)郡加悦(かや)町(現与謝野(よさの)町)に生まれる。早く両親を失い、尋常小学校5年にして織屋小僧となり、以後関西各地の織物・紡績工場などで働き、やがて労働運動に参加。1920年(大正9)上京、東京モスリン亀戸(かめいど)工場に入り、翌年の争議で活躍したが、組合幹部との対立などから退職。同工場で知り合い結婚した堀(現姓高井)としをに生計を支えられながら、プロレタリア文学の創作に着手、『種蒔(たねま)く人』などに発表した。23年より自身と妻の体験をもとに「女工」の人間的復権を目ざして『女工哀史』を執筆し始め、25年(大正14)7月改造社より出版したが、直後の8月18日病没した。

[阿部恒久]

『細井和喜蔵全集刊行委員会・女工哀史記念会編・刊『細井和喜蔵全集』全4巻(1955~56・第2巻以後三一書房刊)』

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改訂新版 世界大百科事典 「細井和喜蔵」の意味・わかりやすい解説

細井和喜蔵 (ほそいわきぞう)
生没年:1897-1925(明治30-大正14)

紡績労働者出身の小説家。京都府生れ。婿養子の父は彼の出生前に離縁され,母と祖母を少年時代に相次いで失ったため,小学校を5年で中退し,織物工場などで働く。1916年大阪へ出て鐘淵紡績などに勤め,このころ友愛会に加盟。20年上京し東京モスリン亀戸工場に入り,労働運動に参加するなかで同じ職場の女工堀としをと結婚。退職後,妻に生活を支えられながら,23年から《女工哀史》の執筆にとりくみ,24年脱稿。翌年改造社から出版されたが,刊行の翌月死去。死後,自伝的小説《奴隷》《工場》が刊行された。1922年以降,《種蒔く人》に小説を発表,詩誌《鎖》の同人でもあった。
執筆者:

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朝日日本歴史人物事典 「細井和喜蔵」の解説

細井和喜蔵

没年:大正14.8.18(1925)
生年:明治30.5.9(1897)
大正時代の小説家。京都府与謝郡の生まれ。父は婿養子で,和喜蔵の出生前に離縁。母は6歳のときに自殺。祖母に育てられたが,祖母の死後小学校を5年で中退。油さし工などをして働き,大正5(1916)年大阪へ出る。鐘紡などの紡績工場で働きながら紡績学校に通い,同9年に上京。東京モスリン紡績亀戸工場へ入り労働争議に参加。11年同じ工場の女工としをと結婚。一時妻と共に早大文学部聴講生となる。12年陀田勘助らと詩誌『悍馬』を創刊。当時の繊維産業女子労働者の悲惨な実態を詳細に描いた記録文学『女工哀史』を執筆中,関東大震災にあい,兵庫県能勢山中に逃れ,13年上京し,その一部を『改造』に発表するが,翌年同作品の出版後まもなく,28歳で貧困のうちに没した。著作集に『細井和喜蔵全集』全4巻(1955~56)がある。

(佐伯順子)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「細井和喜蔵」の解説

細井和喜蔵 ほそい-わきぞう

1897-1925 大正時代の小説家。
明治30年5月9日生まれ。尋常小学校を5年で中退。大正9年東京モスリン紡績亀戸工場にはいり,労働運動に参加。大正14年同工場に勤務する妻と自身の体験にもとづく記録文学「女工哀史」を出版,その直後の8月18日死去した。29歳。のち自伝的小説「工場」「奴隷」が刊行された。京都出身。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「細井和喜蔵」の解説

細井和喜蔵
ほそいわきぞう

1897.5.9~1925.8.18

大正期の作家。京都府出身。養育者の祖母の死で小学校中退。織物工場などの職工となり,友愛会に加入。1920年(大正9)上京し,労働運動に参加。「種蒔く人」に小説を発表。自分と妻の体験記録「女工哀史」の出版で一躍著名となるが,直後に病死。印税は東京青山墓地の「解放運動無名戦士之墓」建立の基金となる。

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世界大百科事典(旧版)内の細井和喜蔵の言及

【女工哀史】より

…京都府生れの作家細井和喜蔵(1897‐1925)の著書。1925年刊。…

※「細井和喜蔵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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