細波・小波・漣(読み)さざなみ

精選版 日本国語大辞典 「細波・小波・漣」の意味・読み・例文・類語

さざ‐なみ【細波・小波・漣】

(古くは「ささなみ」)
[1] 〘名〙
① 風が吹いて立つ、細かく小さな波。さざれなみ。さざれこなみ。
万葉(8C後)一二・三〇四六「左佐浪(ササなみ)の波越す安蹔に降る小雨間も置きてわが思はなくに」
※御伽草子・浦嶋太郎(室町末)「汀涼しきさざなみに、水鳥あまた遊びけり」
② 和菓子の一つ。うるち米の粉を砂糖で固め、表面に近江八景を浮き出させた落雁(らくがん)。滋賀県大津市堅田の名物。堅田落雁。〔随筆・一話一言(1779‐1820頃)〕
馬術で、静かに合わせる手綱のあやつり方の一つ。
※鹿足之次第(1477)「何れにても不拍子なる馬の分には、手まへへさっと引切て、跡はさざ波取合可乗なり」
[2] 琵琶湖の西南沿岸地方をいう。また、近江国(滋賀県)の古名。
※万葉(8C後)一・三一「左散難彌(ササナミ)志賀の大わだよどむとも昔の人にまたも逢はめやも」
[語誌](1)「ささ」は細小の意を示し、「ささやか」「ささやく」「いささ」の「ささ」と同根。
(2)(一)①の挙例「万葉‐三〇四六」の歌については、(二)の地名と解する説もある。とすれば、上代に小さな波の意を表わす語は「さざれなみ」だけということになるが、地名でもその由来は小さな波の意が関係しているとみるべきで、「古事記‐中・歌謡」に「佐佐那美路(ササナミぢ)」があり、かなり古い語形と考えられる。また、この「万葉」例は「ささなみの」の形で用いられているので、「ささなみの」を枕詞とする説もあり、(二)の万葉の例も、この地方の地名にかかる枕詞とも考えられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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