結城合戦絵詞(読み)ゆうきがっせんえことば

改訂新版 世界大百科事典 「結城合戦絵詞」の意味・わかりやすい解説

結城合戦絵詞 (ゆうきがっせんえことば)

1440年(永享12)におこった結城合戦題材とした軍記絵巻。詞1段,絵2段によって構成されている。筆者は不詳。絵画技法,人物の描写からして15世紀末期ごろの成立と推定されている。詞書は〈春王〉〈安王〉が日光山に逃れ,さらに結城氏朝にかくまわれ,結城城に籠城したこと,さらに落城により,兄弟は女装して逃れようとしたが幕府軍に捕らえられたこと,さらに氏朝以下は討死したことを述べている。いっぽう絵は女装した遺子2人が捕らわれようとしている段と,建物の縁で切腹しようとしている武将を中心に,追討軍と籠城軍とが戦っているようすを描写した部分とから成っている。やまと絵の流れをくみながら,漢画の手法をもとりいれて描いたもので,重要文化財に指定されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「結城合戦絵詞」の意味・わかりやすい解説

結城合戦絵詞
ゆうきかっせんえことば

室町後期の合戦絵巻。鎌倉公方(くぼう)足利持氏(あしかがもちうじ)が幕府に反抗して敗死した後、その遺児(春王(はるおう)丸、安王(やすおう)丸)をかくまった結城氏も滅ぼされる結城合戦(1440~41)に取材したもので、現在一部の残欠小巻が残る。結城合戦に関する軍記はかなり多く伝存するが、この絵巻の詞書(ことばがき)はとくに『鎌倉殿物語』の内容に近似し、これらを参考につくられたものと推定される。現存の絵は持氏の自刃、若君(遺児)の捕縛などの場面である。背景は簡素で人物を大きく描き、太く粗放な筆線に特色がある。室町時代(15世紀末~16世紀初)の作と思われるが、筆者は不詳である。重要文化財。

[村重 寧]

『小松茂美編『続日本絵巻大成17 結城合戦絵詞他』(1983・中央公論社)』


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