主に神経と皮膚に認められる病変を特徴とする疾患で、小児期に多く発症します。
結節性硬化症の発症の原因は遺伝子異常であることが、最近の医学研究でわかりました。結節性硬化症の原因遺伝子は、現在2種類が明らかになっています。遺伝子の異常といっても多くは突然変異で、その場合ご両親に異常はありません。この遺伝子はどちらも、細胞が腫瘍化するのを抑えるはたらきがあると現在は考えられており、その異常により細胞が腫瘍化しやすくなって多様な症状が出てくるのだろうと考えられています。
病変の分布や発症年齢が大変幅広く多様ですが、小児期に最も多い症状はてんかん(けいれん発作)です。運動の機能や知能、言語の発達が遅れることもしばしばみられますが、まったく正常であることも多いようです。皮膚の病変として、頬や鼻の周囲にニキビと間違うような
時に腎臓や心臓、眼底に腫瘍がみられることもあり、その場合にはそれぞれ高血圧や不整脈、視力低下がみられることがあります。
体の診察、心理発達検査を基本として、頭部CT・MRI検査で診断されます。合併症の有無を調べる検査として血液・尿検査、脳波、腹部超音波検査、心臓の超音波検査、眼科的検査などが加わることがあります。診断基準があり、多く用いられています。
病気そのものを根本的に治す治療法は今のところありませんが、それぞれの症状に応じた治療を受けることが可能です。てんかんの治療として抗てんかん薬の内服、腫瘍が大きければ外科的切除、運動機能および知的機能の障害に対しては、リハビリテーションを中心とした機能保持訓練などがあります。
遺伝が関係している可能性があることから、必要に応じて遺伝カウンセリングが行われることもあります。本疾患をもつ患者さんと家族のための親の会があり、情報交換が行われているようです。
まずは小児科、小児神経科を受診し、正しい診断を得ることが大切です。必要に応じて、皮膚科、眼科などを受診し、合併症の有無をチェックします。主治医と十分にコミュニケーションを図り、適切な発達援助を受けていくことも重要です。
山田 謙一
出生前(
日本人では6000~7000人に1人に起こる病気ですが、同一家系内でも症状に大きな差があります。家系内に同じ病気の人がいなくても、60~70%は突然発病します。
TSC1またはTSC2の遺伝子変異で、TSC1変異のほうが軽症になります。
早期診断し、治療の方針を医師と相談することをすすめます。
遺伝子変異が見つかった人、あるいは家系内でリスクが高いと考えられる人については、心臓腫瘍(心臓エコー)、脳内結節、腎腫瘍(腹部エコー)の検出と患者さんに対する経過観察が行われます。成人女性に対しては、肺リンパ脈管筋腫症(LAM)の検出目的で呼吸機能検査と胸部CTが行われます。予防的手術はありません。
小杉 眞司
内臓の病変としては、中枢神経系では知能障害、てんかんが症状として出てくることがあり、脳には
皮膚の変化をみた時にこの母斑症を考え、内臓と脳の検査(X線、CT、MRIなど)を行います。皮膚の病変は生検で病理組織診断を行います。また同様の症状がある家族の有無も診断の助けにはなりますが、周囲の家族に症状のないことも時にみられます。
遺伝的疾患なので根本的な治療はなく、検査で明らかになった病変に対してそれぞれ対応します。皮膚の病変は整容面(見た目)から考えて、治療の希望があれば外科的に対処します。
顔面に小さな
安田 浩
結節性硬化症は母斑症のひとつで、
約9割にけいれん発作が、約半数に知的障害がみられます。また、皮膚症状の頻度も高く、学童期から頬に多発する赤色の小結節(顔面血管
腎臓の病変が約8割にみられ、
治療としては、けいれん発作に対する内服療法が重要です。早くから発病し発作のコントロールがうまくできない場合は、知的障害が重症化する可能性があります。命に関わるような問題は一般に多くはないのですが、乳幼児期の横紋筋腫による心不全、成人期の血管平滑筋脂肪腫の出血などには注意が必要です。
顔面の血管
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
皮膚とくに顔面に脂腺腫(しせんしゅ)を主体とする血管線維腫を伴い、神経系も侵されるほか、腎臓(じんぞう)や肺などの臓器ほか全身に過誤腫とよばれる腫瘍(しゅよう)に似た良性の腫瘤(しゅりゅう)を伴う遺伝性疾患。英語名称はtuberous sclerosis complexで、略称TSC。常染色体顕性遺伝する。小児の発症が多くみられたため、かつては精神遅滞(知的障害)、顔面血管線維腫(頬(ほお)にできるにきびに似た隆起病変)、てんかん発作の3徴候をもって診断されてきたが、これらの徴候を伴わない症例も確認されているため、現在では全身の諸症状によって診断される。年齢によって症状は異なり、生後すぐには皮膚に楕円(だえん)形の白いあざ(白斑)がみられ、新生児期では心肥大や不整脈がみられるが成長するにつれて寛解する。乳幼児期にはてんかん発作や知的障害、学童期には顔面血管線維腫を伴い、全体にてんかん発作が多くみられるが小児以外の発症ではこれらを伴わないことがある。CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴映像法)などの画像診断で脳に結節がみられることがこの疾患名の由来となっており、脳細胞の発生異常が疑われている。皮膚では足の爪(つめ)や手に硬い腫瘤ができ、腰部などに隆起状病変を認め、徐々に増大することがある。腎臓では嚢腫(のうしゅ)のほか血管・筋・脂肪成分の増殖による腎血管筋脂肪腫がみられ、腎機能障害や高血圧症のほか、出血に激痛を伴って出血ショックに陥ることがある。肺ではとくに20歳以降の若い女性にリンパ脈管筋腫症(LAM:Lymphangioleiomyomatosis)がみられ、進行すると呼吸不全から死に至ることもある。そのほか子宮筋腫や卵巣嚢腫、内分泌系の疾患として甲状腺腫などのほか、全身の臓器にわたって種々の病変が認められる。
[編集部]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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