(読み)たえる

精選版 日本国語大辞典 「絶」の意味・読み・例文・類語

た・える【絶】

〘自ア下一(ヤ下一)〙 た・ゆ 〘自ヤ下二〙 (続いているものが途中で切れるのが原義)
① 一続きのものが途中で切れる。続いていたものが切れて続かなくなる。とぎれる。
書紀(720)仁徳二二年正月・歌謡「貴人(うまひと)の 立つる言立(ことだて) うさゆづる 多曳(タエ)ば継がむに 並べてもがも」
※竹取(9C末‐10C初)「綱たゆるすなはちに〈略〉落ち給へり」
② さらに続くべきものの先がなくなる。尽きる。途中で消える。滅びる。
※万葉(8C後)五・八三〇「万代に年は来経(きふ)とも梅の花多由流(タユル)ことなく咲き渡るべし」
源氏(1001‐14頃)夕顔「山の端の心も知らで行く月はうはの空にてかげやたえなん」
③ 命がなくなる。息がとまる。死ぬ。また、気絶して正体がなくなる。→絶え入る
山家集(12C後)中「琴の音になみだを添へて流すかなたえなましかばと思ふ哀に」
④ 人との関係が切れる。縁が切れる。交わりがとぎれる。
※万葉(8C後)一一・二六四七「横雲の空ゆ延(ひ)き越し遠みこそ目言(めこと)(か)るらめ絶(たゆ)と隔てや」
伊勢物語(10C前)二二「昔、はかなくてたえにけるなか、猶や忘れざりけん、女のもとより」
世間との行き来がなくなる。人里を離れる。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「かの、たえたる峯に、うつろひ給ひにし」

ぜっ‐・する【絶】

[1] 〘自サ変〙 ぜっ・す 〘自サ変〙
① (「…に絶する」または「…を絶する」の形で用いる) そのもの、または、状態とはまったくかけ離れる。越える。
経国集(827)序〈滋野貞主〉「或強識稽古、或射策絶倫」
※拾玉得花(1428)「妙者、言語を絶(ゼッシ)て、心行所滅也」
② 続いていた状態やものがそこで終わる。絶える。〔文明本節用集(室町中)〕
※化銀杏(1896)〈泉鏡花〉一五「もし強ゐて戸を開きて光明其膚に一注せば、渠(かれ)は立処に絶(ゼッ)して万事休(や)まむ」
[2] 〘他サ変〙 ぜっ・す 〘他サ変〙 物事の関係を断ち切る。断つ。
続日本後紀‐天長一〇年(833)一〇月辛卯「父母歿後、口絶五味、哀慕之情無蹔忘時
花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一六「遂に音信を絶す」

たえ‐・す【絶】

[1] 〘自サ変〙 絶えてしまうようになる。きれるようになる。絶える。尽きる。
※万葉(8C後)一四・三三九七「常陸なる奈佐可の海の玉藻こそ引けば多延須礼(タエスレ)あどか多延世(タエセ)む」
※源氏(1001‐14頃)宿木「心惑ひのたえせぬもあいなきに」
[2] 〘他サ四〙 絶えるようにする。なくする。思い切る。絶やす。
※寛永版曾我物語(南北朝頃)一一「我等肉食をたえしては、身命助かり難し」
浮世草子好色五人女(1686)五「香を絶(タヘ)さず」

ぜつ【絶】

〘名〙
① 「ぜっく(絶句)」の略。
随筆・独寝(1724頃)上「余亦毎絶綴上レ律、必贈彼以且譏且賞」
② 短歌のこと。長歌を中国風に「賦(ふ)」というのに対する。また、接尾語的に、短歌を数えるのに用いる。
※万葉(8C後)一七・三九九三・題詞「敬和覧布勢水海一首并一絶」

たや・す【絶】

〘他サ五(四)〙
① あるものを絶えるようにする。絶つ。
※千載(1187)序「かつは道をたやさざらんがために」
② あるものをなくなったままにすておく。きらす。
※俳諧・炭俵(1694)下「片はげ山に月をみるかな〈利牛〉 好物の餠を絶さぬあきの風〈野坡〉」

ぜっ‐・す【絶】

〘自他サ変〙 ⇒ぜっする(絶)

た・ゆ【絶】

〘自ヤ下二〙 ⇒たえる(絶)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「絶」の意味・読み・例文・類語

ぜつ【絶】[漢字項目]

[音]ゼツ(呉) [訓]たえる たやす たつ
学習漢字]5年
途中でたち切る。連続しているものや関係が切れる。「絶交絶食絶望絶命絶滅気絶義絶根絶断絶中絶途絶廃絶悶絶もんぜつ
遠く隔たる。「絶域絶海絶境隔絶懸絶
こばむ。「拒絶謝絶
普通とはかけ離れて優れている。「絶景絶勝絶唱絶品絶倫冠絶卓絶超絶
この上なく。非常に。「絶好絶賛絶大絶妙凄絶せいぜつ壮絶
漢詩の一体。絶句のこと。「五絶七絶
[名のり]たう・たえ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android