精選版 日本国語大辞典 「繋」の意味・読み・例文・類語
つな・ぐ【繋】
(名詞「つな(綱)」と同語源)
[1] 〘他ガ五(四)〙
① 切れたり離れたりしているものを結びとめて離れないようにする。また、離れないようにひとつづきにする。
※古事記(712)中・歌謡「みつみつし 久米の子等が 粟生(あはふ)には 臭韮(かみら)一本(ひともと) そねが本 其根芽都那芸(ツナギ)て 撃ちてし止まむ」
※幼学読本(1887)〈西邨貞〉一「ここにさるが二ひきゐます。どちらもくさりでつながれてゐます」
② 絶えないようにする。持ちこたえるようにする。
※白氏文集天永四年点(1113)三「昼は牛羊を牧(か)ひ、夜は生を提(ツナグ)」
③ (比喩的に) ある関係を保つ。信用などをとり結ぶ。
※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉虚業家尺牘数則「平生より倹勤の徳を守らざれば到底信用を維(ツナ)ぎ難く候」
④ とらえる。とらえて、獄に入れる。自由を束縛する。また、自分の方に引きとめる。
※高僧伝巻十三康和二年点(1100)「洪、罪に坐して相府に繋(ツナカ)れて、を刺す」
⑤ 跡を追う。血痕や足跡などを手がかりに狙った獲物や敵などの跡をつける。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)三「小家住ゐの人々にはやさしく、銭壱貫弐百つなき集め、合力せしをよろこび、其座よりすぐ旅たち」
⑦ 江戸時代、寄席芸人仲間で、一度その職を追われた者が復職する。
⑧ 見る、認める、の意にいう人形浄瑠璃社会の隠語。
※咄本・私可多咄(1671)一「まことに人をなぶりだてするによりて、かへりて我がつながるる」
[2] 〘他ガ下二〙 ⇒つなげる(繋)
つなぎ【繋】
① あるものとあるものとを結ぶこと。また、そのもの。
② 物事の間隙や次のものまでの間隔を仮にうめるものや事柄。なかつぎ。
④ (交際をつなぐものの意で) 町会や長屋などで、慶弔などの時、金銭を集めること。また、その金銭。
※浮世草子・商人職人懐日記(1713)五「相借屋中は、〈略〉つなぎの進上樽、おめでたいとはやす」
⑤ もろい物、粘りけがない物などが、離れたりくずれたりするのを防ぐために混入するもの。壁土に混入する苆(すさ)、また、そばやつくねなどを作るとき、材料がまとまるように入れる、小麦粉・米粉・くず粉・とろろいも・卵など。
※洒落本・甲駅新話(1775)「蕎麦切へ入る温飩の粉じゃァあるめへし。つなぎだの、なんだのと」
⑥ 歌舞伎で、引き返し幕の時、音楽を演奏したり、拍子木を二つずつ続けて打ったりして幕間をつなぐこと。また、俳優が扮装を変える間、ほかの俳優の演技や音楽でつなぐ場合にもいう。〔戯場訓蒙図彙(1803)〕
⑦ 地歌や箏曲の用語。唄と手事(長い間奏)を繋ぐ楽器のみの部分。
⑧ 「つなぎじろ(繋城)」の略。
⑨ ズボンと上着とが、別々ではなくひとつになっている服。ジャンプ‐スーツ。
※にんげん動物園(1981)〈中島梓〉二二「いま凝ってるのは各種のツナギなので、半年後にゃペンキ屋スタイルが世の中に満ちるかもしれんが」
⑩ =つなぎばいばい(繋売買)
つなが・る【繋】
〘自ラ五(四)〙
① 長く続く。つらなり続く。継続する。前後がうまく続く。
※古道大意(1813)上「たとへば雲の一村、係(ツナ)がる所なく、浮てゐるやうで有った」
② しばられる。とらえられる。
※天地有情(1899)〈土井晩翠〉万有と詩人「かのオルヒスのなすところ 陰府の繋がる魂を解き」
③ 情愛などにひかれる。ほだされる。
④ かかわる。関係がある。深いかかわりあいをもつ。情交関係をもつ。
※洒落本・南遊記(1800)一「そちと斯う長う深逢(ツナガッテ)いるので、此方の心底はしれて有じゃないか」
⑤ 系列につらなる。身内となる。親族となる。
※いさなとり(1891)〈幸田露伴〉五五「良人も旧は他人なりといへ妾に続(ツナガ)れば母様の生の子も同然」
つながり【繋】
〘名〙 (動詞「つながる(繋)」の連用形の名詞化)
① つながること。長く続くこと。また、そのもの。続き。つらなり。
※がらくた博物館(1975)〈大庭みな子〉犬屋敷の女「話のつながりがどうにもうまくいかないということもあるだろう」
② 関係があること。かかわりあいがあること。関連。関係。きずな。
※百鬼園随筆(1933)〈内田百〉飛行場漫筆「そのつながりさへなければ」
つな・げる【繋】
〘他ガ下一〙 つな・ぐ 〘他ガ下二〙
① 切れたり離れたりしているものを結びつける。つなぐ。
※虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一五「同じ様な低い声を、静かに繋(ツナ)げて行く」
② 意味や内容を理解できる。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)二「つなげぬ(〈注〉わからぬ)詞や何や角(か)で。西も東もしらなんだが」
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