繧繝彩色(読み)うんげんさいしき

精選版 日本国語大辞典 「繧繝彩色」の意味・読み・例文・類語

うんげん‐さいしき【繧繝彩色】

〘名〙 同色で薄い色から濃い色へと段層的に濃淡をつける彩色方法。ことに群青緑青(ろくしょう)朱色を用いた彩色で、仏画建築服飾などに用いられた。奈良時代から行なわれ、平安時代に盛んになり、その後も行なわれた。
譬喩尽(1786)四「開通〈北野下森〉の本尊〈阿彌陀丈六座像也〉、後光繧繝彩色也」

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改訂新版 世界大百科事典 「繧繝彩色」の意味・わかりやすい解説

繧繝彩色 (うんげんさいしき)

建築,絵画工芸などの装飾文様における彩色技法のひとつ。暈繝彩色とも書く。同一系統色彩の濃淡の変化を,ぼかしの方法によらず,濃い色調から淡い色調へ(あるいはその逆)段階式に区切りをつけながら塗ることをいう。普通,外側に最も明るい(淡い)色をおき,内側へしだいに暗く(濃く)2~3段,もしくはそれ以上に並べていくが,外側を暗色とし内側に向かってしだいに明色とする場合は逆繧繝と呼ぶ。例えば,青色系の繧繝では白群,群青,群青+墨などの変化で表す。他に緑,赤,紫色系の繧繝がある。繧繝の起源西方モザイクや綴織(つづれおり)などの工芸品の配色法に求められるが,東洋日本絵画の場合,限られた種類の彩色顔料で色調の微妙な変化を求め,あるいは2組の補色関係にある繧繝を隣り合わせてその対比や調和をはかるなど,多様な装飾効果をねらって独特の展開を示した。なお,畳の縁(へり)に繧繝彩色の布を用いたものを繧繝縁という。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「繧繝彩色」の意味・わかりやすい解説

繧繝彩色
うんげんさいしき

装飾文様の彩色法。「暈繝」とも書く。1つの系統の色を淡い (明るい) ものから濃い (暗い) ものへと変化させて塗る場合,ぼかしによらず,数段階に分けて順次濃淡をつけていく方法。これが色の組合せの基本原則と結びついて,特に中国,唐代に発達し,日本では奈良時代以降,建築,絵画,工芸などの装飾に盛んに用いられた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「繧繝彩色」の解説

繧繝彩色
うんげんさいしき

色彩の濃淡の変化を,暈(くま)(ぼかし)によらず,明暗の異なる同系の色面を段階的に並列することで表す方法。中国にならって日本でも7世紀から用いられたが,天平期には紺(青)・丹(に)(赤)・緑・紫の4系統の繧繝を組み合わせた色彩法が法則化された。正倉院宝物に代表的な例がみられる。

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百科事典マイペディア 「繧繝彩色」の意味・わかりやすい解説

繧繝彩色【うんげんさいしき】

繧繝はぼかしの一種で,色を淡,中,濃の3段以上に分けて,段階的に塗る技法。白地の上に各色をこの塗り方で繰り返す彩色法で,奈良時代以降仏像,仏画,仏教建築の彩色に用いられた。

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