羽黒鏡(読み)はぐろきょう

改訂新版 世界大百科事典 「羽黒鏡」の意味・わかりやすい解説

羽黒鏡 (はぐろきょう)

山形県羽黒山の出羽神社の前にある,俗称〈鏡ヶ池〉と呼ばれる御手洗池から発見された鏡をいう。平安時代から江戸時代までの和鏡で,約600面ほどが知られている。このうち平安後期のものは鏡胎が薄く,鏡背には花鳥題材とした文様が柔らかい調子で浮き出されており,優雅な美しさを発揮している。またこれらの鏡は長く池中にあったため,艶(つや)のない暗黒色を呈している。この味わい深い質感と優雅な文様はよく調和して独特の美しさがあるところから,羽黒鏡と呼ばれ珍重されている。湖沼に鏡を投げ入れて祈願する習俗赤城山をはじめ各地にあるが,羽黒山鏡ヶ池はとくに著名である。

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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の羽黒鏡の言及

【金属工芸】より

…鏡も唐式鏡をしだいに離れて和鏡に変化し,薄手の鏡胎に松,梅,薄,蘆,水草,菊,鴛鴦,鶴,雀といった親しみやすい花鳥の題材を薄肉に表現した,抒情的なものが主となった。山形県羽黒山の鏡池から出土した600面に及ぶ羽黒鏡は,その代表作といえる。また平安末期から鎌倉,室町にかけて,鏡の表面に仏像や神像を毛彫や墨画であらわした御正体(みしようたい)(鏡像)を礼拝することが盛行した。…

※「羽黒鏡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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