翁久允(読み)おきなきゅういん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「翁久允」の意味・わかりやすい解説

翁久允
おきなきゅういん
(1888―1973)

明治末から大正期の在米日本人文学者、ジャーナリスト。明治21年2月8日富山県生まれ。1907年(明治40)に19歳でアメリカのシアトルへ渡り、1909年『旭(あさひ)新聞』の懸賞小説に応募した『別れた間』が二等に入選した。明治末年に一時帰国、再渡米し1915年(大正4)に長編『悪の日影』を『日米新聞』に連載した。これは、移民社会における生活不安や個人主義、望郷などを描くべきであるという移民地文学の提唱者としてそれを実証するものであった。1924年帰国、朝日新聞社下村海南(しもむらかいなん)と出会ったのが縁となり同社入社、1926年5月『週刊朝日編集長となる。1931年(昭和6)竹久夢二と渡米、1933年インドに旅行し、タゴールと会う。1935年からは富山の郷土史研究に専心、月刊誌『高志人(こしびと)』を戦後まで刊行し続けた。昭和48年2月14日死去。

[清田義昭]

『翁久允全集刊行会編・刊『翁久允全集』全10巻(1971~1973)』『松田良夫著『翁さんと私』(1975・つむぎ社)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「翁久允」の解説

翁久允 おきな-きゅういん

1888-1973 明治-昭和時代の小説家,ジャーナリスト。
明治21年2月8日生まれ。40年渡米し,シアトルの邦字紙「旭(あさひ)新聞」などに小説を発表。大正13年帰国し,15年「週刊朝日」編集長となる。昭和11年故郷の富山で郷土文化誌「高志人(こしびと)」を創刊した。昭和48年2月14日死去。85歳。作品に「道なき道」「大陸亡者」など。

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