習慣性扁桃炎
しゅうかんせいへんとうえん
Recurrent tonsillitis
(のどの病気)
急性扁桃炎を年に3~4回繰り返すようになると、習慣性扁桃炎または反復性扁桃炎と呼びます。小児期に多く、小学校入学前にピークとなります。
急性増悪期には、急性扁桃炎と同じ原因、症状です。咽頭痛、嚥下痛、発熱、全身倦怠感、耳への放散痛などが症状としてあげられます。口蓋扁桃は赤くはれ、白い塊(膿栓)が付着します。頸部(首)のリンパ節が腫大して痛みを伴うことがあります。
急性期が過ぎると、慢性単純性扁桃炎の状態になり、軽いのどの痛み、乾燥感、微熱があったり、またはほとんど症状のない場合もあります。
急性扁桃炎の場合とほぼ同じですが、細菌の慢性感染があることを示す血液中のASO、ASK測定を追加して行います。
保存的な薬物治療にもかかわらず、扁桃炎を繰り返し、扁桃に膿栓を認め、頸部リンパ節が腫大し、血清ASO、ASK値の上昇を認める場合には、本人または家族と相談して、口蓋扁桃、咽頭扁桃(アデノイド)を摘出します。現在のところ、明確な扁桃摘出術(コラム)のガイドラインはありませんが、藤原らの手術基準は以下のようなものです。
急性扁桃炎の年間罹患回数が4回以上の非扁桃摘出症例の追跡調査から、扁桃摘出インデックス(年間罹患回数×罹患年数)を算出し、8以上を扁桃摘出の適応としています。
扁桃は免疫器官であるので、むやみに摘出するものではありません。しかし、繰り返す扁桃炎が日常生活の質に影響するようであれば、積極的に扁桃摘出を考慮したほうがよいでしょう。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
家庭医学館
「習慣性扁桃炎」の解説
しゅうかんせいへんとうえん【習慣性扁桃炎 Habitual Tonsillitis】
[どんな病気か]
子どもは扁桃炎にかかりやすく、誰でも年に1、2回は扁桃が腫(は)れて幼稚園や学校を休みます。なかには年4回以上も扁桃炎にかかったり、症状が強く、一度かかると何日も熱が下がらなかったりする子どももいます。このような場合を、習慣性扁桃炎といいます。
おとなでも、20~30歳代で習慣性扁桃炎にかかる人がいます。
[原因]
まだ不明な点も多いのですが、最近は、扁桃常在菌叢(へんとうじょうざいきんそう)(病原菌の繁殖を抑えるようにはたらく細菌の集まり)の乱れや病原菌(溶連菌(ようれんきん)、黄色(おうしょく)ブドウ球菌(きゅうきん)、肺炎双球菌(はいえんそうきゅうきん)など)に対する免疫防御機能(めんえきぼうぎょきのう)の発達の遅れなどが原因の1つと考えられています。
[治療]
手術をして扁桃を摘出すること(扁桃摘出術)がもっともよい治療法です。手術をすると9割以上の人が扁桃炎にかからなくなり、かかっても軽くてすみます。
手術は1~2時間程度で、全身麻酔で行なうので痛みもなく、安全にできます。入院は、7~10日程度です。
扁桃炎にかかる回数は一般に成長するにつれ減少しますが、いたずらに薬剤などで抑えていたり、罹患(りかん)回数が少なくても溶連菌抗体価(こうたいか)が高い場合には、リウマチ性の病気や腎炎(じんえん)が続発する可能性もあるので、一度、耳鼻咽喉科医(じびいんこうかい)に相談するとよいでしょう。
かつては、扁桃は免疫臓器なので手術をするべきではない、扁桃を摘出すると全身の免疫能が落ちて病気にかかりやすくなるなどの意見が一部にありましたが、現在では、このような心配はまったくないとされています。
出典 小学館家庭医学館について 情報
世界大百科事典(旧版)内の習慣性扁桃炎の言及
【アンギーナ】より
…かつて扁桃炎として呼びならわされたもの。現在では医学的に習慣性アンギーナhabitual angina,習慣性扁桃炎という場合以外には,耳鼻咽喉科領域ではあまり使われていない。習慣性アンギーナとは,年2,3回あるいは数回,急性化をくりかえす扁桃の炎症で,平常は慢性的な経過をとる。…
※「習慣性扁桃炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」