老化(加齢)の概念

内科学 第10版 「老化(加齢)の概念」の解説

老化(加齢)の概念(加齢と老化)

(1)概念
 日本語の老化は,狭義の老化と広義の老化に分類できる.広義の老化とは,性成熟期以後の過程で,衰退,死亡するまでの全経過を示し,徐々に,自然に発生する変化であり,英語でのaging(加齢,老齢化)に相当する.狭義の老化とは,老年期以後,細胞や個体の機能が衰退し,細胞の機能が失われる過程で,最終段階は死であり,英語ではsenescence(老衰),senility(老年,老衰)と表現されている.ゲノム上の遺伝子の働き(遺伝因子)によって,人体は発生,発育,性成熟期まではプログラムされており,40歳前後からは,環境因子とよばれるフリーラジカルなどによる生体構成成分への障害,老廃物蓄積などによって老化は進行する.
(2)定義
 老化とは,加齢に伴う生理機能の減退であり,体の恒常性が時の経過とともに変化し,ついには崩壊してしまう一連の過程である. Strehler(1960)は,老化の特徴を以下の4項目にまとめている.
1)普遍性: 全生命体に存在するもので必然的に生じる.
2)内在性: 寿命は同一種においてほぼ一定であり,遺伝的にプログラムされている.
3)進行性: 老化は徐々に起こり,不可逆性で,後戻りしない.
4)有害性: すべての機能は衰退,低下し,有害性の蓄積によって死を迎える.
(3)高齢化率
 先進国では,老年者の絶対数が増加している.WHOの分類では,65歳以上を老年者と定義している.さらに,65~74歳を老年者(elderly),75~84歳を高齢者(old),85歳以上を超高齢者(very old)と分類している.また,人口構成員のなかで65歳以上の老年者が占める割合を高齢化率と定義し,高齢化社会(7~14%),高齢社会(14~21%),超高齢社会(21%以上)と分類している.日本は,1995年に高齢化率が14%をこえ,高齢社会となったが,2005年には,超高齢社会に突入した.先進国のなかで,高齢化のスピードの最も早い国である.日本は,2010年末で,人口が1億2806万人,うち老年者は23%の2929万人である.これが,2035年には,人口1億1070万人,老年者は,33.7%の3225万人と予測されている.[三木哲郎]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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