耐熱性高分子(読み)タイネツセイコウブンシ

化学辞典 第2版 「耐熱性高分子」の解説

耐熱性高分子
タイネツセイコウブンシ
heat resistant polymer, thermally stable polymer

機械的性質,電気的性質などの諸性質を,高温において保持しうる高分子をいう.たとえば,300 ℃ で数百時間機械的特性を失わない材料.無機高分子キレート高分子耐熱性構成繰返し単位(CRU)をもつ有機高分子などがこれに属する.一般に,有機高分子においては,全共役系高分子が熱的に安定である.しかし,それらの高分子は,溶媒に解けにくい.耐熱性CRUとしては,分子間力の大きな尿素アミド結合などがその代表である.たとえば,ポリイミド,ポリキノリン,ポリ(ベンゾイミダゾール),剛直棒状高分子などがある.一方,無機高分子としては,

などを骨格とする多数の例が知られている.一般的にいえば,融点 Tm融解におけるエンタルピーの変化ΔHエントロピーの変化ΔSと次の関係をもつ.

したがって,耐熱性を向上させるためには分子間の相互作用が強く,融解してもエントロピーがあまり増大しないような構造をもたせることが必要となる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「耐熱性高分子」の意味・わかりやすい解説

耐熱性高分子
たいねつせいこうぶんし
heat-resistant polymer

高温 (主として 200℃以上) のもとでも溶融せず,長時間の使用に耐えられるような高分子化合物。無機高分子としてはガラス繊維炭素繊維など,有機高分子としてはテフロン芳香族ポリアミドなどがその例である。合成樹脂の構造理論のうえで,剛直性を大きくし,分子間力を強化すれば耐熱性は改善されることが知られるようになり,この条件に適合するように重縮合により各種の耐熱性樹脂が開発されている。アメリカ航空宇宙局が宇宙開発のためその開発を促進した。たとえばポリフェニレンオキシド,芳香族ポリアミドなどがあげられる。宇宙開発計画用のほか電気絶縁材料としての用途が多い。また,耐熱性繊維としても使用され,アメリカのデュポン社の「ノメックス」がその代表例である。

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