聖堂参事会(読み)せいどうさんじかい(英語表記)capitulum[ラテン]

改訂新版 世界大百科事典 「聖堂参事会」の意味・わかりやすい解説

聖堂参事会 (せいどうさんじかい)
capitulum[ラテン]

ローマ・カトリック教会の機関(英語でchapter,ドイツ語でKapitel,フランス語でchapitre)。個々の聖堂に属する聖職者canoniciによって構成される合議体的組織。中世中期以降はほぼ定員制をとる。この名称は,順守すべき会則の章〈capitulum〉を日々読みあげたことに由来し,転じて集会場所,構成員の全体を指すようになったといわれる。組織としては,教会の聖務執行および世俗的諸任務の遂行にあたり,司教ないし教院長praepositusを補佐すべき義務を負うほか,評議・同意権をもって司教等の行政権力を統御する。参事会員は聖堂内陣における典礼的聖務,参事会集会への参加,教会の諸役の執行を義務づけられ,内陣の固定席,参事会での議決権,聖職録と住居を取得することができる。

 816年のいわゆる〈アーヘン会則〉は,在俗聖職者の私的財産所有を認めつつも,聖堂所属者全体が司教,教院長の指導下に共同生活を行うことに力点を置いていたが,時とともに参事会は司教財産と区別された固有の財産をもつようになり,それが個々の参事会員に聖職録としてふり当てられたため,参事会員の地位は貴族諸家により子弟を給養するためのポストとして事実上専有されるようになった。こうした在俗聖職者にも使徒的生活の理想を実現しようとした11世紀後半以来の聖堂参事会改革運動により,〈アウグスティヌス会則〉順守の誓いをたてて改革された律修参事会が少なからず出現したが,永続的な改革の実は上がらなかった。13世紀以来,参事会の権限はますます拡大され,司教座聖堂においては排他的司教選挙権を取得し,事実上,司教区行政の基本方針を決定する機関となった。
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世界大百科事典(旧版)内の聖堂参事会の言及

【修道会】より

…その影響を受けて,教区聖職者も修道士と同様な厳格な共同生活を送るようになる。各地の司教座の聖堂参事会がそれであるが,その代表的なものは南フランスのサン・リュフと北フランスのプレモントレの修道会である。彼らは対異端説教,福音伝道,巡礼者保護など使命はさまざまであったが,その基準となったのが〈アウグスティヌス会則〉であったのでアウグスティヌス派聖堂参事会とも呼ばれる。…

※「聖堂参事会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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