肇論(読み)じょうろん

精選版 日本国語大辞典 「肇論」の意味・読み・例文・類語

じょうろん デウロン【肇論】

(「じょう」は「肇」の呉音) 後秦の僧、肇の著。一巻。「宗本義」を冒頭に書き加え、「物不遷論」「不真空論」「般若無知論」「涅槃無名論」の四編をこの順序で編集したもの。中国仏教形成に大きな影響を与えた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「肇論」の意味・わかりやすい解説

肇論
じょうろん

中国、後秦(こうしん)代の仏教書。著者は僧肇(そうじょう)。1巻。『物不遷論(もつふせんろん)』『不真空論』『般若無知(はんにゃむち)論』『涅槃(ねはん)無名論』という4編の論文に、『宗本義(しゅうほんぎ)』の一編を冠して編されたものだが、『宗本義』の真撰(しんせん)については疑問がもたれ、編纂(へんさん)は梁(りょう)代から隋(ずい)代のころと推定される。著者は、鳩摩羅什(くまらじゅう)に師事して大乗仏教、とくに般若空観(くうがん)の理解に優れた。本書は、その基本的命題である諸法の実相・空・般若・涅槃についての見解を、当時の一般的理解や老子・荘子などの思想と比較しつつ明らかにしたもので、以後の中国仏教や思想界に多大の影響を及ぼし、多くの注釈書も書かれた。

[伊藤隆寿]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「肇論」の意味・わかりやすい解説

肇論
じょうろん
Zhao-lun

中国,東晋の僧,僧肇論文集。4種の論文を集めたもので,現存するものは『物不遷論』『不真空論』『般若無知論』『涅槃無名論』を載せ,仏教思想の重要な問題点を当時の中国思想界の重要問題と関連させながら論述している点が特徴で,中国仏教発展史のうえでその意義は非常に大きい。

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