デジタル大辞泉
「育」の意味・読み・例文・類語
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は‐ぐく・む【育】
〘他マ五(四)〙 (「羽包(はくく)む」の意)
① 親鳥がひな鳥を羽でおおい包む。
※
万葉(8C後)九・一七九一「
旅人の宿りせむ野に霜ふらば吾が子羽褁
(はぐくめ)天の
鶴群(たづむら)」
② 養い育てる。養育する。また、世話をする。面倒をみる。
※重之集(1004頃)下「はぐくみし君をくもゐになしてよりおほはらをこそたのむべらなれ」
③ いつくしみ大切に扱う。かわいがる。
※万葉(8C後)一五・三五七九「
大船に妹乗るものにあらませば羽具久美
(はグクミ)もちて行かましものを」
④ いたわり守る。かばう。また、精神や
感情を大切にしてそれを伸長させる。
※
源氏(1001‐14頃)
末摘花「さるかたの後見にてはぐくまむとおもほしとりて」
⑤ 治療する。療養する。
※
夫木(1310頃)二六「信濃なるなすのみゆをもあむ
さばや人をはぐくみ病やむべく〈よみ人しらず〉」
そだ・てる【育】
〘他タ下一〙 そだ・つ 〘他タ下二〙
① 生物が
一人前になるまでの
過程をうまく進むように助け導く。生きものが、おいたつようにする。成長させる。養育する。転じて、
物事を発展させる。
進捗(しんちょく)させる。
※平家(13C前)八「程なく産をしたれば、
男子にてぞありける。
母方の祖父太大夫そだてて見むとてそだてたれば」
※
忘却の河(1963)〈
福永武彦〉「しかし私はどうしても、〈略〉新しく愛を育てるべき心の場所を持たなかった」
②
能力などをのばすように教え導く。しこむ。
しつける。
③ 重んじる。大事なものとして引き立てる。
※玉塵抄(1563)一五「
中略は
上下をそだてて中を略することぞ、没下は上と中とをそだてて下をのくることぞ」
④ 相手に
調子を合わせててなずける。おだてる。そそのかす。のせる。
※子孫鑑(1667か)上「むふんべつ人のいふ事をも、いかにも尤もと先そだてて、さて又かやうにもあるべきやといへば」
そだち【育】
① 成長すること。成育。また、成育の状態。〔
日葡辞書(1603‐04)〕
② 育てられ方。育った境遇や、育つときに受けたしつけなど。そだちかた。
素姓(すじょう)。そだちがら。
※俳諧・毛吹草(1638)五「氏もよしそだちもよしや藤の棚〈宗房〉」
③ (接尾語的に用いる) その場所に生まれて成長すること。また、そのような育てられ方をすること。「温室そだち」「お嬢様そだち」など。
※平家(13C前)九「わどのは東国そだちのものの、けふはじめてみる西国の山の
案内者、大にまことしからず」
そだ・つ【育】
[1] 〘自タ五(四)〙
① 生物が生まれてから一人前になるまでの過程を進む。生きものが、時間とともに成長する。おいたつ。大きくなる。
※為仲集(1085頃)「もも敷にそだつとならば鶯も雲井の鶴を見も習はなん」
② 能力などがのびる。内容などが豊かになる。
[2] 〘他タ五(四)〙 養う。そだてる。
※歌舞伎・勝相撲浮名花触(1810)発端「お前の為には惣領のあの子、乳母(うば)でも置いて育(ソダ)って見たいが」
そだて【育】
〘名〙 (動詞「そだてる(育)」の連用形の名詞化)
① 育てること。養うこと。養育。「育ての親」
② 教えしつけること。しこみ。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)二「抱親(かかへをや)の抑からの、そだての悪しきからなれば」
③ おだてること。
※評判記・色道大鏡(1678)五「かれはのせことよ、是はそだてなるよなどと、さきのまことをいふもむさといつはりにおとして」
はごくみ【育】
※御伽草子・蛤の草紙(室町末)「越鳥南枝に巣をかくる翼も、親のはごくみを思ひ」
いく‐・す【育】
〘他サ変〙 生物を養いそだてる。また、子供など一人前になるまで世話をやき、教えみちびく。育てる。
※中華若木詩抄(1520頃)中「夏至には微陰始て起り、万物を育するに」
はぐくみ【育】
〘名〙 (動詞「はぐくむ(育)」の連用形の名詞化) いつくしみ育てること。養育。はごくみ。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「ありがたき御はぐくみをおぼし知りながら」
はごく・む【育】
〘他マ四〙 「はぐくむ(育)」の変化した語。
※類従本重之集(1004頃)下「はこくみし君を雲井になしてより大空を社たのむへらなれ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報