胎内(市)(読み)たいない

日本大百科全書(ニッポニカ) 「胎内(市)」の意味・わかりやすい解説

胎内(市)
たいない

新潟県北東部にある市。2005年(平成17)、北蒲原(きたかんばら)郡中条町(なかじょうまち)、黒川村(くろかわむら)が合併して市制施行、胎内市となる。市名は飯豊(いいで)山地に源を発し、市域を貫流して日本海に注ぐ胎内川にちなむ。JR羽越本線(うえつほんせん)と国道7号、113号、345号、290号が通じる。中心街は日本海に面した干拓地、沖積平地に発展。この西部地域を除いた大半は山間地で、胎内川本・支流、あるいは加治(かじ)川の支流坂井(さかい)川沿いに集落が点在する。胎内川の上流域の山地は磐梯朝日国立公園(ばんだいあさひこくりつこうえん)、中流域は胎内二王子(にのうじ)県立自然公園に属し、スキー場・ハイキングコース、飯豊連峰への登山道などが整備されている。

 胎内川、坂井川ほかの段丘上には先縄文時代から平安時代にわたる遺跡が分布。平安末期、胎内川扇状地を中心に摂関家領奥山庄(おくやまのしょう)が開かれた。同庄は中世には三浦・和田一族(後の中条氏)による開発が進み、『奥山庄波月条(なみつきのじょう)絵図』(国指定重要文化財)が残る。古くから臭水(くそうず)(石油)の産地で、『日本書紀』にみえる「越国」が献上する「燃ゆる水」(臭水)の産地だったといわれ、前掲絵図にも「久佐宇津条」がみえる。旧黒川村の地名黒川も臭水、黒い水(石油)の流れる川によるともいう。大正時代、山麓(さんろく)では黒川油田の開発も行われた。1960年(昭和35)に中条、紫雲寺(しうんじ)ガス田の開発が進み、豊富な天然ガスを原料とするガス化学コンビナートが建設され、化学工業都市に発展。沖合では岩船沖油ガス田が操業クラレ、JX石油開発、日立産機システムなどの工場がある。乙宝寺(おっぽうじ)三重塔(国の重要文化財)、鳥坂(とさか)城跡、地本(じもと)のミズバショウ群落などの名所がある。面積264.89平方キロメートル、人口2万8509(2020)。

[編集部]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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