胎毒(読み)たいどく

精選版 日本国語大辞典 「胎毒」の意味・読み・例文・類語

たい‐どく【胎毒】

〘名〙 乳児の顔や頭にできる皮膚病の昔の俗称胎内母体から受けた梅毒(ばいどく)もとで発生すると伝えられたところからいうが、医学的には、先天性梅毒によるものはまれで、湿疹膿痂疹(のうかしん)などの体質または細菌によるものをいったと考えられる。くさけ。
女重宝記(元祿五年)(1692)三「子は薦のうへにすておくゆへに、そのまに口にふくみたる胎毒(タイドク)をはつこゑと一どにのみこみて、疱瘡、くさなどわづらふ事なり」

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デジタル大辞泉 「胎毒」の意味・読み・例文・類語

たい‐どく【胎毒】

乳幼児の頭や顔にできる皮膚病の俗称。母体内で受けた毒が原因と思われていた。現代医学では、脂漏湿疹しっしん急性湿疹膿痂疹のうかしん性湿疹などをいう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「胎毒」の意味・わかりやすい解説

胎毒
たいどく

乳幼児の頭部顔面にみられる湿疹(しっしん)の古い俗称で、現代医学的には一部の先天性梅毒によるものを除き、大部分脂漏性湿疹や急性湿疹などの体質的なものか、ブドウ球菌による膿痂疹(のうかしん)性湿疹である。古来、母体内で受けた毒によりおこると考えて胎毒とよび、やたらに治療すると内攻するなどといわれ、駆瘀血(くおけつ)剤の川芎(せんきゅう)や大黄(だいおう)などを含む胎毒下(くだ)しを服用していた。これらはいずれも誤りで、それぞれの原因に応じた治療を早期に行うべきである。

[新井正夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胎毒」の意味・わかりやすい解説

胎毒
たいどく
infant eczema

乳幼児の頭部,頸部などにできる慢性皮膚病。土俗的医療観である「毒が病因となる」という考え方から,母胎内で受けた毒によるものとして,この病名が生れた。先天梅毒によるものは例外で,普通は脂漏性湿疹,膿痂疹のように,アレルギー現象による素質的なものや,細菌の原感染,あるいは2次感染によるものが大部分である。

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