胎生種子(読み)たいせいしゅし

精選版 日本国語大辞典 「胎生種子」の意味・読み・例文・類語

たいせい‐しゅし【胎生種子】

〘名〙 母体についたままで発芽する種子メヒルギなどのマングローブ類の種子に見られる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「胎生種子」の意味・わかりやすい解説

胎生種子
たいせいしゅし

熱帯・亜熱帯の海岸のマングローブ林をつくるヒルギ科植物(メヒルギ、オヒルギなど)にみられる。種子とよばれるが、実際には中に種子を1個もつ果実である。一般の植物の種子は母体から脱落したのち発芽するが、胎生種子は次のように独特の成長を行う。受精した胚珠(はいしゅ)の中で胚が成長を続け、その主根の先は珠皮を突き破り、さらに外側の子房壁も突き破って外に出る。胚はさらに成長を続け、とくにその胚軸の部分が長大となり(長さ20~40センチメートル、太さ約2センチメートル)、表面は緑色となる。この状態でも、子葉と茎頂の部分は子房の中に入ったままで、胚軸は枝先から垂れ下がるようになる。子房の外側は、たとえばオヒルギでは鮮紅色の萼(がく)で包まれる。完熟すると花柄が切れて、果実は上端に萼をつけたまま垂直に落下する。干潮などで水が浅い場合は、とがった主根の先が底の砂泥に突き刺さり、そこで側根を出して根づき始める。満潮などの場合は、胚は水で別の場所に運ばれ、そこで定着する。

[山下貴司]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の胎生種子の言及

【種子】より

…マングローブ植物であるヒルギは休眠期がなく,親植物から栄養分を吸収しながら発根し,数cmにもなる。このように樹上で発芽するものを胎生種子という。 種子の寿命は普通1~数年であるが,ヤナギは短命で数日から数十日という。…

※「胎生種子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android