胡蝶装(読み)コチョウソウ

デジタル大辞泉 「胡蝶装」の意味・読み・例文・類語

こちょう‐そう〔コテフサウ〕【××蝶装】

のり付けした面を開くと胡蝶が羽を広げたようになるところから》粘葉でっちょう異称

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精選版 日本国語大辞典 「胡蝶装」の意味・読み・例文・類語

こちょう‐そう コテフサウ【胡蝶装】

〘名〙 書物装丁一種印刷または書写した一枚の紙の、文字の面を内側にし、中央から縦に二つ折りとする。外側面に文字はない。その紙の折り目を並べて重ねていき、折り目の外側に糊をつけて各葉を接着させて一冊とする。その背部に、各葉の折り目が正しく並列し、開けば文字面は、蝶が羽根を広げたように見えるところからこの名がでた。のちには、外側面にも文字が印刷されたり書かれたりした。日本では弘法大師三十帖冊子仁和寺蔵)がもっとも古い粘葉装(でっちょうそう)。〔随筆・好古小録(1795)〕〔通雅‐器用・装潢

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「胡蝶装」の意味・わかりやすい解説

胡蝶装
こちょうそう

本の装丁法の一つ。粘葉装(でっちょうそう)と同じ。筆写あるいは印刷された用紙を1枚ずつ二つ折りして、折り目の外側に1センチメートル程度に糊(のり)をつけて貼(は)り合わせ、それに表紙をつけて冊子としたもの。表紙は、前後を続けて1枚の厚様紙で包んだものもあり、背の部分を裂(きれ)か紙で包み、前と後の別々に表紙をつけたものもある。開いてみると、ちょうど蝶が羽を広げた姿に似ているところからこの称がある。胡蝶装は、中国宋(そう)時代の代表的装丁といわれ、わが国では平安から室町の各時代を通じて広く普及した。空海筆『三十帖冊子(さんじゅうじょうさっし)』(仁和寺(にんなじ)蔵、国宝)はこの装丁によるわが国現存最古のものとして有名である。

[金子和正]


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百科事典マイペディア 「胡蝶装」の意味・わかりやすい解説

胡蝶装【こちょうそう】

書物の装丁の一様式。〈粘葉装(でっちょうそう)〉ともいう。中国,日本などで行われた。印刷または書写した紙を1枚ずつ縦二つ折りにし,これを何枚も重ね,各葉の折り目の部分に糊(のり)をつけ密着させ,1冊に作る。名は紙の文字のある部分を開くと,蝶が翅を広げたようになることによる。
→関連項目大和綴列帖装

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胡蝶装」の意味・わかりやすい解説

胡蝶装
こちょうそう

和漢書の装丁法の一種。必要枚数の紙を重ねて2つ折りとし,折り目の2ヵ所に穴をあけ,綴糸を通して外側で結ぶ。装丁法としては最も簡便な方法で,開いた形が蝶の羽根に似ているところからこの名がある。 (→粘葉装 )

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改訂新版 世界大百科事典 「胡蝶装」の意味・わかりやすい解説

胡蝶装 (こちょうそう)

粘葉装(でっちょうそう)

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世界大百科事典(旧版)内の胡蝶装の言及

【製本】より

…これは長い間に折り目が切れやすいので,紙葉を重ねて,折り目に糊入れし,表紙でくるむ方法が案出された。ひろげると蝶のはねのようなかっこうをしたので〈胡蝶(こちよう)装〉と呼ばれ,また糊ではりつけたので〈粘葉(でつちよう)装〉ともいわれた。この方法は唐代にもおこなわれ,宋代にはいり,印刷術が盛んになるにつれてその使用も増大していった。…

【粘葉装】より

…書物装丁の一つ。用紙を一枚ごとに二つ折して,折り目(外側)に沿って5mm幅ほど,のり付けして重ねて貼り合わせ,表紙をつけて冊子としたもの。のりを用いて各葉をとじつけるので〈粘葉〉といい,それ以前の折本(おりほん)や旋風葉に代わって盛んとなった。表紙には,背の部分を紙や布(絹)で包み,前後別々に表紙を添えるものと,または一枚の表紙で前後を包み,背の部分をのり付けにした,包み表紙がある。のり付けされた丁を見開くと,チョウが羽根を広げた形になるので,中国では蝴蝶装と呼ぶ。…

※「胡蝶装」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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