能美島(読み)のうみじま

日本歴史地名大系 「能美島」の解説

能美島
のうみじま

広島市の南方海上二〇キロ、広島湾口のやや東寄りにある周囲八〇キロ、南北一五キロ・東西四キロの島で、中央東部にある飛渡瀬ひとのせ(現大柿町)の地峡を境にして安芸郡江田えた島に連接する。東南は早瀬はやせノ瀬戸を隔てて安芸郡倉橋くらはし島に相対し、東北は津久茂つくも瀬戸を隔てて江田島西北部に面し、西北は奈佐美なさび瀬戸・厳島海峡(宮島瀬戸)を隔てて厳島(現宮島町)を望む。周囲には大奈佐美おおなさび島・の島(小奈佐美島)小黒神こくろかみ島・大黒神島沖野おきの島・わが島・なが島などの諸島がある。島内は北西の宇根うね(五四二メートル)、中央の真道しんどう(二八六・六メートル)、南東の陀峯だぼう(四三八メートル)などの山系により概して丘陵山地をなすが、中央に南北に広がる平地が開け、この平地を境にして東能美ひがしのうみ島と西能美島とに分れる。北に江田島湾、南に鹿川かのかわ(港)および大原おおはら湾が広がり、南部海岸は典型的な沈下リアス海岸となっている。島の北西部に沖美町、中央部に能美町、南東部に大柿おおがき町の三町が位置する。

島名は「予章記」の貞治二年(一三六三)の記事に「能美島」とみえる。島全域を荘域とした院領荘園として、高野山検校帳(高野山文書)寛治五年(一〇九一)二月一九日の記事に「能梨庄」とみえ、「高野山興廃記」に「能美庄」がみえる。「乃見」「乃美」とも記された。「経覚私要鈔」応仁元年(一四六七)七月三日条には「ノウヘ」とある。島名の由来について、宝暦一三年(一七六三)の「能美島志」(専念寺蔵)に「山色能美故名能美島、又曰上古有能美翁者、主此島故曰能美島」とあり、「芸藩通志」は「昔能見部氏の所居又は所領にてもありし故に名づくにや」と記す。

大柿町大字大原字河内こうちから石器時代の石鍬が、同町大字深江の椿ふかえのつばき公園の地からは貝塚とともに弥生式土器が、同町大字柿浦かきうらとびはなをはじめ島内各所から古墳時代の土器が出土している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「能美島」の意味・わかりやすい解説

能美島
のうみじま

広島県南西部、広島湾内にある島。東部は飛渡瀬(ひとのせ)の地峡によって江田(えた)島と連なり、南東部は早瀬瀬戸(はやせのせと)を挟んで倉橋(くらはし)島に対するが、早瀬大橋によって連絡している。北西から南東方向に細長い島で、中央がくびれており、北部を西能美島、南部を東能美島という。

 島内からは弥生(やよい)時代、古墳時代の土器が発掘されており、平安後期には能美庄(しょう)であった。行政的には佐伯(さえき)郡沖見、能美、大柿(おおがき)の3町からなっていたが、2004年(平成16)に3町と安芸(あき)郡江田島町が合併、江田島市として市制施行した。広島、呉(くれ)両市への通勤・通学者が多い。丘陵地の多い島内は階段状に耕作され、ミカン栽培のほか、花卉(かき)・野菜栽培、近海漁業、カキ・ノリ養殖が行われる。地続きの江田島と合わせた面積は91.44平方キロメートル、人口2万7031(2010)。

[北川建次]

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改訂新版 世界大百科事典 「能美島」の意味・わかりやすい解説

能美島 (のうみじま)

広島湾中央にある島で,飛渡瀬(ひとのせ)の砂州で江田島とつながる。面積61km2。南北に細長い紡錘形の二つの小山地からなり,中央の平地部を境に西能美島,東能美島と呼ばれる。平安後期,島は能美荘と呼ばれる皇室領荘園となり,一部は高野山に寄進されていた。荘官であった能美氏の開発と考えられ,能美氏一族はその後も長く島の在地支配者であった。行政的には佐伯郡に属し,北西部の沖美町,中央部の能美町,南東部の大柿町の3町に分かれるが,1973年より江能広域行政事務組合を設立。3町は2004年合併して江田島町とともに江田島市となった。山地中腹までミカンなどかんきつ類の畑がおおい,またトマト,花卉などの施設園芸が盛んである。周囲の海にはカキいかだが浮かぶ。広島市への通勤・通学が多い反面,海水浴,釣り,ミカン狩りなどで来島する人々も多い。
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百科事典マイペディア 「能美島」の意味・わかりやすい解説

能美島【のうみしま】

広島県南西部の島。面積61km2平安時代には能美庄が成立,中世には大内氏の勢力下となり,江戸時代にはすでに能美ミカンの名が知られた。東の江田島とは地続きであるが別の島のように呼ばれる。佐伯郡沖美能美大柿の3町(3町とも現・江田島市)からなり,段々畑による畑作,ミカン栽培のほか,真珠養殖を営む。広島,呉への通勤者も多い。
→関連項目広島[県]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「能美島」の意味・わかりやすい解説

能美島
のうみじま

広島県南西部,広島湾内にある島。江田島市に属する。中央の地峡部で北部の西能美島と南部の東能美島に区分され,飛渡瀬 (ひとのせ) の地峡部で江田島とつながっている。丘陵性山地がほとんどで,地峡部や海岸性低地に集落がある。ミカン,野菜,花卉の栽培が盛ん。東能美島と倉橋島の間に早瀬大橋がかかる。面積 70.69km2。人口2万 737 (1995) 。

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デジタル大辞泉プラス 「能美島」の解説

能美島

広島県江田島市、広島湾中央部にある島。「のうみじま」と読む。江田島とは南部で陸続きになっており、実質的にはひとつの島の西側にあたる。両島をあわせた面積は約91.53平方キロメートル。砲台山森林公園内の旧三高山砲台土木学会により土木遺産に認定されている。江田島湾に面した海水浴場がある。

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