脂肪の塊(読み)シボウノカタマリ(英語表記)Boule de Suif

デジタル大辞泉 「脂肪の塊」の意味・読み・例文・類語

しぼうのかたまり〔シバウのかたまり〕【脂肪の塊】

原題、〈フランスBoule de Suifモーパッサン小説。1880年刊。普仏戦争中、占領下ルーアンから脱出する乗り合い馬車乗客の「脂肪の塊」とよばれる人のよい娼婦主人公に、同乗者たちの偽善性と卑劣さを描く。

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精選版 日本国語大辞典 「脂肪の塊」の意味・読み・例文・類語

しぼうのかたまり シバウのかたまり【脂肪の塊】

(原題Boule de Suif) 小説。モーパッサン作。一八八〇年発表。「脂肪の塊」と呼ばれる一人の娼婦を通し、同じ馬車に乗り合わせた人々の本態観察、表現した自然主義的作品。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「脂肪の塊」の意味・わかりやすい解説

脂肪の塊
しぼうのかたまり
Boule de Suif

フランスの作家モーパッサンの中編小説。1880年刊の『メダン夕べ』の一編として発表。メダンとはゾラが住んでいたパリ近郊の地名で、ゾラと5人の若い作家が、プロイセン・フランス戦争をモチーフにした作品を一つずつ持ち寄って成った中短編集。当時は自然主義文学の宣言的役割を果たしたが、いまではモーパッサンの作品だけが読まれる。プロイセン軍に占領されたルーアンの町から逃げ出す乗合馬車に貴族、企業家、小売商人、尼僧、共和主義者、そして肉づきのよさから「脂肪の塊」とあだ名される娼婦(しょうふ)が乗り合わせるが、プロイセン士官に足止めを食う。困った一行は、娼婦にことば巧みに犠牲の精神を説いて敵士官に身を売らせて出発の許しを得るが、目的を達するとたちまち娼婦に冷淡になり罵倒(ばとう)を浴びせる。人間社会の卑劣、偽善を痛烈に暴いたもので、フロベールはこの作品を「傑作」と絶賛し、モーパッサンの出世作となった。

宮原 信]

『新庄嘉章訳『脂肪の塊・テリエ館』(講談社文庫)』

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