家庭医学館 「脾臓損傷(脾損傷)」の解説
ひぞうそんしょうひそんしょう【脾臓損傷(脾損傷) Injury of Spleen】
胸の左側や上腹部を打ったり、圧迫されたり、刃物で刺されたり、銃で撃たれたりしたときにおこります。
左上腹部の鋭い痛み、吐(は)き気(け)や嘔吐(おうと)をともなうこともしばしばです。
脾臓(ひぞう)は血液の豊富な臓器で、損傷を受けると出血量が多くなり、出血性(しゅっけつせい)ショック(「腹部外傷」の出血性ショック)におちいって生命にかかわることが少なくありません。症状も、出血が少しずつ続けば遅れて出ます。
[検査と診断]
症状からほぼ推察できますが、腹部X線撮影、超音波検査、CTなどで確認します。
[治療]
出血量が少なく、血圧が正常で安定しているなど全身状態が良好であれば、輸液や輸血といった保存療法で経過を観察します。
少し出血量が多いときは、脾動脈塞栓術(ひどうみゃくそくせんじゅつ)(コラム「脾動脈塞栓術」)が行なわれることがあります。
血圧が低く、輸液をしても上昇しないなど全身状態が悪いときは、開腹し、出血を止める手術をします。
脾臓を摘出すると、あとで脾摘後重症感染症(ひてきごじゅうしょうかんせんしょう)(敗血症(はいけつしょう)など)がおこることがあるといわれているので、脾臓は摘出せず、残すのが原則です。
打撲(だぼく)や圧迫による損傷の場合、そのときは出血していなくても、受傷後、数日から1週間すると脾臓が破裂し、大出血になることがあります(遅発性破裂(ちはつせいはれつ))。このため、脾臓損傷の場合は、10日~2週間くらい入院して経過を観察することもあります。