腱鞘炎(読み)ケンショウエン(英語表記)tenosynovitis

翻訳|tenosynovitis

デジタル大辞泉 「腱鞘炎」の意味・読み・例文・類語

けんしょう‐えん〔ケンセウ‐〕【××鞘炎】

腱鞘との摩擦などで起こる炎症。指の使いすぎによるものが多く患部に痛みとれがある。

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精選版 日本国語大辞典 「腱鞘炎」の意味・読み・例文・類語

けんしょう‐えん ケンセウ‥【腱鞘炎】

〘名〙 腱と腱鞘との間に摩擦(まさつ)が起きて、そこに炎症が起こる病気。その多くは急性で、腱の走行にそって細長く腫れ、圧迫すると痛む。親指を多く使うキーパンチャーピアニストなどに多い。〔医語類聚(1872)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「腱鞘炎」の意味・わかりやすい解説

腱鞘炎 (けんしょうえん)
tenosynovitis

手足などにある長いには,腱の動きを滑らかに行わせるトンネル様の構造がある。これを腱鞘という。腱鞘は腱が骨を有効に動かすための滑車の役割をし,腱が脱臼しないように制動しているが,腱鞘炎とは,この腱鞘に起こる炎症である。腱鞘炎には化膿性のものや結核性のものもあるが,むしろまれで,リウマチ性のものや,過度の運動で非特異的に炎症が生じて起こるもの(タイピストやピアニストにみられる)が多くみられる。症状としては,圧痛があり,知覚異常や運動障害が起こる。リウマチ性のものは,手指の腱鞘によくみられ,腫張によって手根管症候群を併発することもある。腱鞘炎は慢性化すると,腱鞘が肥厚して狭窄を起こして腱の動きを障害するようになる。これを狭窄性腱鞘炎というが,ばね指(指の屈伸が阻害され,曲げると伸びなくなり,むりに伸ばすとパチンと急に伸びる状態)が代表的な例で,中年の女性に多い。治療としては,原因疾患がある場合はその治療を行うとともに,安静にし,マッサージなどの対症療法を行う。これで多くの場合軽快するが,腱鞘切開が必要となることもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「腱鞘炎」の意味・わかりやすい解説

腱鞘炎
けんしょうえん

手足の指骨に付着する長い腱にはトンネル構造の腱鞘があって腱の動きを潤滑にしている。この腱鞘の炎症を腱鞘炎という。日常多くみられるのは腱の使いすぎによって発生するド・ケルバンde Quervain腱鞘炎である。手をよく使う人、とくに婦人に多くみられ、手関節の母指側で長母指外転筋、短母指伸筋に発生することが多く、手関節の橈骨(とうこつ)側から前腕の橈骨側に、母指の運動時に疼痛(とうつう)がおこる。また、母指の運動時に音がする軋音(あつおん)性腱鞘炎や、腱鞘の肥厚が強くなって母指の屈伸が困難になる狭窄(きょうさく)性腱鞘炎もある。ひょうそで化膿(かのう)が腱鞘まで広がると化膿性腱鞘炎となる。結核性腱鞘炎もあるが、現在はまれなものとなった。なお、ばね指も腱鞘の慢性炎症で発生することがある。

 治療は、手をなるべく使わないようにすることが必要であり、副腎(ふくじん)皮質ホルモンの局所注射が奏効する。手術を要することは少ないが、狭窄性のものなどでは、腱鞘切開を行わなければ治らないことがある。

[永井 隆]

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百科事典マイペディア 「腱鞘炎」の意味・わかりやすい解説

腱鞘炎【けんしょうえん】

腱鞘の各種原因による炎症。腱鞘をもたないアキレス腱などでは腱周囲炎と呼ばれる。症状は局所のはれ,疼痛(とうつう),運動の不自由など。急性と慢性に区別。急性腱鞘炎は化膿菌の直接感染か,皮下【ひょう】疽(ひょうそ)が腱鞘に及んだ場合などに起こる。治療は抗生物質投与,切開排膿など。慢性腱鞘炎は過労や局所の刺激などが原因で,手指に多く,キーパンチャー,ピアニストなどによくみられる一種の職業病。治療は安静,湿布などのほか,副腎皮質ホルモンが有効で,長期にわたり症状が続く場合は腱鞘切開術を行う。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「腱鞘炎」の意味・わかりやすい解説

腱鞘炎
けんしょうえん
tendovaginitis

手指の腱は腱鞘という二重のさやで包まれているが,この腱鞘の炎症をいう。代表的なものは,結核性腱鞘炎のような細菌性の炎症と,狭窄性腱鞘炎のような機械的刺激による反応性の炎症である。結核性腱鞘炎は,局所の軽い腫脹と疼痛で始り,次第に手指の運動制限を起すが,最近はほとんどみられない。狭窄性腱鞘炎には,母指の過度の使用のため橈骨茎状突起部の腱鞘に起る,いわゆるドーケルバン病 (デケルバン病ともいう) のほか,ばね指などがある。治療には局所の安静,副腎皮質ホルモン剤の局所注射,腱鞘切開手術などを行う。

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家庭医学館 「腱鞘炎」の解説

けんしょうえん【腱鞘炎】

 筋肉と骨とをつなぐ腱の外側を包んでいる腱鞘におこる炎症です。
 もっとも頻度が高いのは、腱鞘の中が狭くなるために腱のすべりが悪くなって摩擦がおこる狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)です。
 おもな症状は疼痛(とうつう)と腫(は)れで、手をよく使う中年の女性に多く発生します。
 治療は、湿布やサポーターなどで手を安静に保ちます。痛みが強い場合は、痛む腱へステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)剤を注射します。
 治りにくい場合は、狭くなっている腱鞘を切開し、すべりをよくする手術が行なわれます。

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