腹部外科(読み)ふくぶげか(英語表記)abdominal surgery

改訂新版 世界大百科事典 「腹部外科」の意味・わかりやすい解説

腹部外科 (ふくぶげか)
abdominal surgery

外科の一分野。外科は体の解剖学的区分により脳外科,胸部外科(心臓,肺)および腹部外科に分けられるが,腹部外科はとくに食道から直腸肛門までの消化管や肝臓膵臓および脾臓などの実質臓器の疾患を扱う。これら対象となる臓器のうち,食道は解剖学的には胸腔内に存在するが,手術のときには開腹術を伴うことが多いために腹部外科の範疇はんちゆう)に入れられる場合が多い。太い静脈に直接チューブを入れて,高濃度の糖液,アミノ酸液を注入する中心静脈栄養法や種々の抗生物質の発見により,規模の大きい腹部外科手術も可能となった。さらに近年では,手術時間の短縮,出血量の減少という目的で消化管を吻合(ふんごう)するときに,吻合器械が用いられ良好な成績が報告されている。
外科
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「腹部外科」の意味・わかりやすい解説

腹部外科
ふくぶげか
surgery of abdomen

腹膜を含めた腹壁腹部臓器を対象とする外科をいう。近代医学が確立されて以来,最初の腹部外科は,1884年6月 21日に行われた T.ビルロートの胃切除術である。これは 19世紀なかばアメリカで実用化された麻酔法と,イギリスで採用された J.リスターに始る無菌法の併用によって成功している。次いでハーバード大学が中心となって虫垂除去 (盲腸炎の手術的療法) が行われるようになり,1902年戴冠式直前のイギリス国王エドワード7世の虫垂炎に対する処置 (麻酔ならびに除去) に成功したことは,この手術療法を世界に広める重要なきっかけとなった。現在多く行われているものとして,ほかに胆嚢除去,腹膜炎開腹治療などがある。

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