膵臓のしくみとはたらき(読み)すいぞうのしくみとはたらき

家庭医学館 「膵臓のしくみとはたらき」の解説

すいぞうのしくみとはたらき【膵臓のしくみとはたらき】

膵臓のしくみ
 膵臓はからだのほぼ中央にあり、胃の裏側、脊椎(せきつい)の前方に位置しています。重量は60~90gで、かまぼこのような形をしています(図「前から見た膵臓の位置」図「膵臓の位置(横断面)」)。
 十二指腸に近い部位、つまりからだの右側から頭部(とうぶ)(膵頭部)、体部(たいぶ)(膵体部)、尾部(びぶ)(膵尾部)と3つに分けて呼ばれ、尾部は脾臓ひぞう)に接しています。頭部から尾部に至るにしたがって、しだいに細くなっていきます。
 膵臓の中央には主膵管(しゅすいかん)という管が貫通しており、管の中には膵液(すいえき)が流れています。主膵菅は、膵頭部で総胆管と合流し、ファーター乳頭を経て十二指腸に開口しています(図「膵臓のしくみ」)。
 膵臓には外分泌機能(がいぶんぴつきのう)と内分泌機能(ないぶんぴつきのう)の2つのはたらきがあります。
 膵菅に分泌された膵液が十二指腸内で作用する場合を外分泌、膵臓から血液中に分泌された物質が全身に作用する場合を内分泌といいます。
●膵臓の外分泌機能
 膵液は腺房細胞(せんぼうさいぼう)という細胞で合成され、腺房腔(せんぼうくう)というすき間に分泌されます。1日に分泌される膵液の量は約1500mℓです。腺房腔は導管(どうかん)につながり、しだいに合流して主膵管と呼ばれる太い管となり、十二指腸に開口します。
 食物が胃を通って十二指腸に到達すると、その粘膜(ねんまく)からセクレチンコレシストキニンというホルモンが放出され、膵臓に作用して膵液の分泌を促進します。
 膵液にはトリプシンキモトリプシンアミラーゼリパーゼなどの消化酵素(しょうかこうそ)が含まれています。トリプシンとキモトリプシンはたんぱく質を、アミラーゼはでんぷんを、リパーゼは脂肪(しぼう)をそれぞれ分解し、食物を小腸吸収しやすい形に変えます。
 これらの消化酵素によって膵臓自身が分解されないのは、つぎのような巧みなしくみのためです。
 たとえばトリプシンは、トリプシノーゲンという、たんぱく質を分解する活性のない状態で合成され、十二指腸内に放出されます。そして、十二指腸内の酵素によってトリプシノーゲンがトリプシンに変換され、初めてたんぱく質を分解する活性をもつようになります。
 また、膵液はアルカリ性の重炭酸(じゅうたんさん)イオンを多量に含んでいます。これによって、強い酸性を示す胃液を中和し、十二指腸を胃液から保護するとともに、膵液に含まれる消化酵素がはたらきやすくなる環境を提供します。
●膵臓の内分泌機能
 膵臓にはランゲルハンス島と呼ばれる場所があります。この場所は内分泌にかかわる細胞群が集まっているところです。
 そのうちのベータ細胞は、インスリンを合成し、血液中に分泌します。インスリンは、ぶどう糖(とう)(血糖(けっとう))を細胞内にとりこませてエネルギー源として活用させるうえで不可欠のホルモンです。このインスリンが不足してぶどう糖が活用されず、血糖値が上がってしまう病気が糖尿病です。
 一方、アルファ細胞で合成されるグルカゴンは、インスリンと拮抗(きっこう)(対抗)して、血糖値を上昇させるはたらきがあります。
◎膵臓の主要な症状
 膵臓がなんらかの原因で炎症をおこした状態が膵炎(すいえん)です。
 膵炎になると、暴飲暴食後に、強い腹痛や背部痛(はいぶつう)がおこります。また、慢性化すると膵液の分泌低下のために消化・吸収不良をおこし、下痢(げり)や脂肪便(しぼうべん)になることもあります。
 膵炎は、アルコールの飲み過ぎが原因であることが多いのですが、胆石(たんせき)によることもあります。
 なお、膵臓にがんができて総胆管が閉塞(へいそく)すると、胆汁が血液中に逆流して黄疸が生じることがあります。
 また、持続する頑固な背部の痛みで発症することもあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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