(読み)ナマス

デジタル大辞泉 「膾」の意味・読み・例文・類語

なます【×膾/×鱠】

古くは、魚・貝・獣などの生肉を細かく刻んだもの。のちに、魚・貝や野菜などを刻んで生のまま調味酢であえた料理をさす。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「膾」の意味・わかりやすい解説

膾 (なます)

鱠とも書く。《和名抄》が〈細切肉也〉としているように,古くは生の魚貝類や鳥獣肉を細切りにしただけのものをいった。《日本書紀》景行天皇53年8月条などに名が見られ,〈羹(あつもの)〉とともに最も古い調理法といえる。室町期になると,山吹ます,卯の花(うのはな)なます,雪なます,笹吹(ささぶき)なます,その他多くの種類が登場する。山吹なますはカレイの肉にその卵をいってまぶしたもの,卯の花なますはぬた(酒かすにからしを加えたもの)であえたもの,雪なますは魚の上におろしダイコンを盛ったもの,笹吹なますはダイコンの笹がきを加えたもので,いずれもふつうは酢をかけて供した。刺身がなますから分化するのは室町中期ごろのことで,細切りのものを合せ酢であえた物をなます,なますよりも大きく切り,タデ酢,ショウガ酢,煎酒(いりざけ)などの調味料を別器で添えるのを刺身と呼ぶようになった。現在では酢の物呼称が一般的で,なますの名はわずかにダイコンとニンジンのせん切りを材料とする紅白なます,それに干柿を加えた柿なますなどに残るだけとなった。また,地方によってはアジなどの肉をみそとともにミンチ状にたたいたものを沖なます,たたきなますと呼ぶこともある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「膾」の意味・わかりやすい解説

膾【なます】

鱠とも書く。酢の物の一種。日本の古い調理法で,生肉(なましし)のつまった語といい,古くは鳥獣肉の膾,魚介肉の鱠があった。現在は魚介肉,野菜が主で,細かく切り,三杯酢,酢みそ,たで酢,醤(ひしお),からし酢,いり酒酢などであえ,生で食べる。ダイコンとニンジンのダイコン膾,アユのいかだ膾,タイやカレイの卵をいり酒でいり,作り身にまぶしつける山吹膾,ひな祭につくるアサツキ膾など。
→関連項目刺身

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android