臍帯血移植(読み)さいたいけついしょく(英語表記)cord blood transplantation

知恵蔵 「臍帯血移植」の解説

臍帯血移植

臍帯血(さいたいけつ)移植とは、臍帯の血液中に含まれている造血幹細胞を保存し、白血病など血液系の難病患者に移植する治療法。臍帯とは、臍(へそ)の緒のこと。造血幹細胞とは、白血球・血小板・リンパ球などのもとになる細胞のこと。臍帯血移植は、同じ造血幹細胞移植の一種である骨髄移植と異なり、ドナー(提供者)の負担が軽く、白血球の型が異なっていても適合率が高いという利点がある。移植症例数は、1997年に初めて非血縁者間で行われて以来、1万5千件を超えた(~2017年)。16年には、新生児の臍帯血を使って、iPS細胞も作製されている(ただし、外部機関への提供は中止)。
臍帯血の採取・調製・保存や医療機関への提供は、厚生労働大臣の認可を受けた「公的さい帯血バンク」が担っている。日本赤十字社などとの提携の下、全国六つの事業所に約1万本の臍帯血が保管されている。また、ドナーと委託契約を結び、有償で臍帯血を保管する「民間さい帯血バンク(臍帯血プライベートバンク)」も活動している。臍帯血を使った再生医療に期待が寄せられていることもあり、国の認可は必要なく、確認されているだけで過去7社(稼働中は3社/17年11月時点)が事業を行ってきた。しかし17年、全国の複数クリニックで、美容・アンチエイジング・がん治療など、医学的に根拠がない違法な臍帯血移植が行われていることが発覚。8月には、治療計画の届け出などを義務付けた「再生医療安全性確保法」(14年施行)違反で、移植に関わったクリニックの医師や販売業者ら6人が逮捕された。破産した「民間さい帯血バンク」から流出した臍帯血が使われたものと見られ、厚生労働省は民間バンクの実態解明および指導強化を図っている。

(大迫秀樹 フリー編集者/2017年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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