臨海実験所(読み)リンカイジッケンショ(英語表記)marine biological station

デジタル大辞泉 「臨海実験所」の意味・読み・例文・類語

りんかい‐じっけんしょ【臨海実験所】

海洋および海洋生物の研究のために沿岸に設置される実験所。日本では国立大学法人に所属するものがほとんど。

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精選版 日本国語大辞典 「臨海実験所」の意味・読み・例文・類語

りんかい‐じっけんじょ【臨海実験所】

〘名〙 海洋動植物を研究するため、海辺に設けられた実験所。〔大増補改訂や、此は便利だ(1936)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「臨海実験所」の意味・わかりやすい解説

臨海実験所 (りんかいじっけんじょ)
marine biological station

主として海洋生物学の実験的,生態学的研究のために海岸に設置された研究所。この種の研究所として最も歴史の古いものは,ラカズ・デュティエH.de Lacaze-Duthiers(1821-1901)が1872年にパリ大学に作ったロスコフ臨海実験所Laboratoire maritime de Roscoffと,ドイツ人ドールンA.D.Dohrn(1840-1909)が73年に私費を投じてナポリ設立したナポリ臨海実験所Stazione zoologica di Napoliである。なかでもナポリの実験所は当初から共同利用方式を採用し,H.ドリーシュ,E.メチニコフ,A.ポルトマンをはじめ世界各地の学者がここで研究をした。運営にあたっては,各国の学会・文教当局と契約を結んで,実験施設を貸与し,その席料を経費にあててきた。日本も研究席をもっており,毎年2名の研究者が派遣されている。もっとも,近年はイタリア政府から多額の補助を受けなければならなくなった。

 84年,イギリス南部の軍港プリマスに設置された臨海実験所はイギリス海洋生物学会Marine Biological Association of the United Kingdomに所属しており,イギリス環境庁の研究プロジェクトの遂行,大学との共同研究など,イギリスにおける海洋生物学研究の拠点となっている。アメリカのマサチューセッツにあるウッズ・ホール臨海実験所Woods Hole Oceanographic Institutionは,1930年,C.O.ホイットマンの努力によってロックフェラー財団の援助で設立された(前身はL. アガシーがつくった臨海実習所)。ここは,海洋生物学にとどまらず,地球物理学的な観点,海洋政策など社会科学的な観点も含めて,6部門,850名のスタッフで研究にあたっている。また毎年サマー・コースを開催し,後継者の養成につとめている。

 日本最初の臨海実験所は,1886年,三浦半島三崎町に設置された東京帝国大学付属臨海実験所である。その後も東北大(浅虫),京大(紀州白浜)など各国立大学に次々と臨海実験所が設置され,現在その数は20余にも達している。設置時期の早さや数の多さについては,欧米諸国に決して引けをとっていないわけである。日本が四面を海に囲まれた海洋国,水産国である事情を考えれば当然といえよう。しかし日本の臨海実験所は,すべて国立大学理学部の付属施設という制約もあって,スタッフも少なく設備も小規模なものにとどまっており,関係者の間では,複数の研究部門をもつ大規模な臨海実験所の設立が強く望まれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「臨海実験所」の意味・わかりやすい解説

臨海実験所
りんかいじっけんしょ
marine biological laboratory

海岸に設置され、海洋および海産生物に関する教育、研究を行う施設をいう。世界最古の臨海実験所は1872年に創設されたフランスのロスコフ実験所、ついでイタリアのナポリ実験所(1874)である。ともに現在でも第一線の研究機関として活動しており、とくに後者は国際共同利用の実験所として著名である。このほか外国のおもな臨海実験所には、イギリスのプリマス、ドイツのヘルゴラント、アメリカのウッズ・ホールなどがある。日本では1886年(明治19)に初めて東京大学の三崎臨海実験所が、続いて1920年代に京都大学の瀬戸、東北大学の浅虫、九州大学の天草の各臨海実験所が設立され、海洋生物学研究の先駆となった。

 臨海実験所での研究内容は、海産生物を対象または材料とする点で共通しているが、分類学、生態学、発生学、生理学、生化学など、多岐にわたり、各実験所それぞれに特徴がある。また研究対象となる実験所周辺の生物相も、亜寒帯性の北海道から熱帯性の沖縄まで、著しく変化に富んでいる。したがって臨海実習の内容も、海洋生物学の手ほどきを目的とする初級コースを除けば、各大学によりかなり異なり、他大学の学生も受講できる公開臨海実習の制度が設けられている。他の研究機関や外国からの研究者による共同利用も盛んで、それらの来訪研究者に対するサービスも、臨海実験所のおもな業務の一つになっている。

 日本の臨海実験所のほとんどは国立大学に所属し、前記4か所のほかに、北海道大学の厚岸(あっけし)、筑波(つくば)大学の下田(しもだ)、新潟大学の佐渡、名古屋大学の菅島(すがしま)、岡山大学の牛窓(うしまど)、広島大学の向島(むかいしま)、高知大学の宇佐(うさ)、琉球(りゅうきゅう)大学の瀬底(せそこ)などがある。

[荒賀忠一]

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百科事典マイペディア 「臨海実験所」の意味・わかりやすい解説

臨海実験所【りんかいじっけんじょ】

海洋学や海産生物の研究のために海の近くに設けられた実験所。普通の生物実験室設備のほか,海水の水道,飼育水槽,採集器具,採集船などを備える。日本では神奈川県三浦市にある東大付属の実験所が最も古く(1887年設立),外国ではイタリアのナポリ,米国マサチューセッツ州のウッズホールのものが有名。なお湖沼の研究を目的としたものは臨湖実験所と呼び,滋賀県大津市にある実験所が一例。

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