自在鉤(読み)じざいかぎ

精選版 日本国語大辞典 「自在鉤」の意味・読み・例文・類語

じざい‐かぎ【自在鉤】

〘名〙
いろりかまどの上につるし、鍋、釜、鉄びんなどを自由に上げ下げできるようにした鉤。じざい。
※雑俳・川柳評万句合‐安永四(1775)満二「自在かぎいぢってのがけもてあまし」
明治時代石油ランプをつった鉤。
星座(1922)〈有島武郎〉「煤けたホヤランプがそこにも一つ簡単な鉄条(はりがね)の自在鍵にぶら下って」

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デジタル大辞泉 「自在鉤」の意味・読み・例文・類語

じざい‐かぎ【自在×鉤】

囲炉裏いろりかまどなどの上につり下げ、それに掛けたなべかまやかんなどと火との距離を自由に調節できるようにした鉤。
[類語]金具掛け金口金留め金蝶番引き金締め金尾錠かぎフック

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「自在鉤」の意味・わかりやすい解説

自在鉤
じざいかぎ

いろりの火で煮炊きするために、鍋(なべ)や釜(かま)をかける道具。いろりの上を通る梁(はり)からつり下げ、上げ下げや回転を自在にすることができる仕掛けがくふうされていることから、自在鉤といわれている。初めはエノキなどのじょうぶな枝を利用してつくった固定式のつり鉤であった。自在鉤は、下端に鉤のついた鉤棒と、それを通す竹筒および鉤棒を上下させ固定する横木とから構成される。竹筒の上端は天井に固定され、その中に納められた鉤棒の下端は横木の穴を通り、横木の他端は竹筒に固定されている。横木は木片に穴をあけただけのものから、タイやフナなど魚をかたどったものや、扇、ひょうたんなどの装飾の施されたものまである。いずれも縁起を祝ったものである。とくに、魚は火を防ぐという俗信から魚を用いる所は多い。「出鉤入魚(しゅっこうにゅうぎょ)」などといって、その方向を定めている所もある。自在鉤は、鉤どの、鉤つけ様、オカン様などと敬称をつけてよび、火の神の依代(よりしろ)としての考え方もあった。そのためこれに手をかけることのできる者も決まっており、揺すったりすることを戒めた。正月には松を飾ったり、子供がいろりに転び込まないように、まじないとして一文銭と杓子(しゃくし)を結び付ける所もあった。

[倉石忠彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自在鉤」の意味・わかりやすい解説

自在鉤
じざいかぎ

いろりの上から下げ,鍋や釜を掛けてつるす道具。普通は竹筒と鉤付きの棒から成り,小ざる,手と呼ばれる横木の摩擦抵抗を利用して棒を固定する。必要に応じて自由自在に鍋底と火の距離を調節できるところからこの名がある。自在鉤はカギド,オカマなどと呼ばれ,火の神の依座と考えられていた。

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百科事典マイペディア 「自在鉤」の意味・わかりやすい解説

自在鉤【じざいかぎ】

囲炉裏(いろり)の上に下げて鍋(なべ)をつる道具。鉤のある木を竹筒に通し,上端は天井の蛭鉤(ひるかぎ)に掛け,小猿(こざる)という小さな横木によって鉤を上下自在に調節する。茶室で茶釜をつるのにも用いる。

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