自家汚染(読み)じかおせん

改訂新版 世界大百科事典 「自家汚染」の意味・わかりやすい解説

自家汚染 (じかおせん)

魚介類の養殖に伴う水域の環境汚染を水産業の立場から表現したことばである。沿岸浅海や河川湖沼を利用した養殖場は,産業廃水や生活廃水など陸上からの汚染によって被害を受けることがある。一方,養殖の集約化が進むと養殖生物の排泄物や餌の残滓ざんし)の堆積量が自然のもつ浄化能力を超えるようになり,水質や底質を悪化させ,その結果,養殖の生産性も低下する。浅海のカキ養殖場やアコヤガイ真珠)養殖場では,ある場所を繰り返し利用しているとしだいに成長や身入りが悪くなったり,真珠の品質が低下する。このような現象は漁場老化として古くから知られていたが,その原因は主として海底に貝類のふんが堆積するためで,養殖場を新しい場所に移したり,交互に利用するなどの対策がとられてきた。カキ養殖やアコヤガイ養殖は無給餌で,餌は天然の生産系から供給されるが,海面ブリ養殖や湖面のコイ養殖などでは,漁獲された雑魚や配合飼料が餌として与えられている。このような場合,給餌に伴う水域への有機物負荷は非常に大きく,環境の悪化を起こしやすい。ブリ(ハマチ)養殖は昭和30年代の初めに瀬戸内海沿岸で普及し始め,その後急激に発展し,西日本を中心に各地に広がった。ところが,昭和40年代に入ると成長率の低下や疾病流行が大きな問題となり,また,陸上からの汚染も大きな要因と考えられるが,赤潮の発生や酸素不足などによる大量斃死(へいし)がしばしば起こるようになった。その対策として,放養密度削減や投餌方法の改善などの努力が払われている。
養殖
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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