自家薬籠中の物（読み）じかやくろうちゅうのもの

精選版 日本国語大辞典

じか【自家】=薬籠中(やくろうちゅう)［=薬籠(やくろう)］の物(もの)

(「薬籠」は薬箱) 自分の薬箱の中の薬のように、自分の思うままに利用できるもの。また、自分のものとして取り入れたもの。

※腕くらべ（1916‐17）〈永井荷風〉一四「直ぐにそれを自家薬籠中のものにする敏捷な才がある」

出典　精選版 日本国語大辞典

デジタル大辞泉

自家じか薬籠中やくろうちゅうの物もの

自分の薬箱の中にある薬のように、自分の思うままに使える物、または人。「数か国語を自家薬籠中の物とする」

出典　小学館

故事成語を知る辞典

自家薬籠中の物

すっかり身に付けた知識や技能など、思い通りに使いこなせるもののたとえ。

[使用例] 「千鳥」は箏そう曲きょくでは最もポピュラーな曲の一つだから邦枝には勿論自家薬籠のものであったが［有吉佐和子＊地唄｜1956］

[由来] 「旧唐書―元げん行こう沖ちゅう伝」に見えるエピソードから。七世紀、唐王朝の時代。元行沖という人物は、歯に衣着せぬ発言をするので、狄てき仁じん傑けつという高官に高く評価されていました。あるとき、元行沖が狄仁傑に向かって、「あなたの家にはおいしい食材がたくさんありますが、私自身は薬の役割をしようと思うのです」と言うと、狄仁傑は笑って、「『此これ吾が薬籠中の物なり（この人は、私の薬箱に入っているものだ）』。一日だってなしではやっていけないよ」と述べたということです。ここから、「自家薬籠中の物」は、手元に置いておきたい人材のたとえとして使われるようになり、転じて、日本では、思い通りに使いこなせるものを指すようになりました。

出典　故事成語を知る辞典

ことわざを知る辞典

自家薬籠中の物

自分の薬箱の中にある薬のように、自分の思うとおりに利用できるもの。また、すっかり身につけた知識や技能。

[使用例] 最もポピュラーな曲の一つだから邦枝にはもちろん自家薬籠のものであったが［有吉佐和子＊地唄｜1956］

[解説] 「薬籠」は、薬箱。

出典　ことわざを知る辞典