自貢(読み)じこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「自貢」の意味・わかりやすい解説

自貢
じこう / ツーコン

中国四川(しせん)省中南部の地級市。揚子江(ようすこう)支流沱江(だこう)の流域に位置し、内昆線(内江(ないこう)―昆明(こんめい))が通じる。4市轄区、2県を管轄する(2016年時点)。人口330万(2014)。

 中国有数の岩塩産地で「塩都」の呼称がある。塩の生産は戦国時代末期に始まり、とくに唐代には大規模な拡張が行われ、歴代王朝は重要財源である塩の専売管理機関を置いた。また、唐・宋(そう)代には塩井戸から噴出する天然ガスを、くみ上げた塩水を煮沸する燃料として使い始めた。1939年、二つの塩産地である富順(ふじゅん)県自流井(じりゅうせい)と栄(えい)県貢井(こうせい)とが合併して自貢市が設立された。1953年以後、国営塩務局のもとで現代的採塩場や製塩工場の建設が進められ、今日では塩関連の化学工業も発展し、天然ガスの産地ともなっている。

 恐竜化石多く発掘されることでも知られ、自貢恐竜博物館は世界的に有名である。同博物館を含む地質公園は、2007年に「自貢ジオパーク」として世界ジオパークに認定された。

[小野菊雄・編集部 2017年8月21日]

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改訂新版 世界大百科事典 「自貢」の意味・わかりやすい解説

自貢 (じこう)
Zì gòng

中国,四川省南東部の市。人口105万(2000)。1939年富順県の自流井と栄県の貢井が合併して成立。富順県は宋に始まるが後漢に江陽,北周に富世,唐には富義県を置いた。塩都ともよばれ,戦国末から塩井を掘り,天然鹹水(かんすい)をくみ上げて煮つめ〈井塩(せいえん)〉をとってきた。唐代には規模も拡大される。各王朝は塩税を課して塩の専売をおこなった。また,塩井とともに〈火井〉とよぶガス井から天然ガスを採取し,塩の精製に利用してきた。
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百科事典マイペディア 「自貢」の意味・わかりやすい解説

自貢【じこう】

中国,四川省中南部の都市。もとの自流井と貢井を合併した都市。古くから岩塩の産地として知られ,塩井が多く,製塩が盛んなため塩都の称があり,四川産塩の2分の1以上を産する。内昆鉄路に沿い,近代工業としては,化学工業,電気器具,セメント工業なども盛んである。151万人(2014)。

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世界大百科事典(旧版)内の自貢の言及

【四川[省]】より

…また,戦国時代の終りには利用されていた〈井塩〉も唐代には採掘が本格化する。井塩は〈塩井〉からくみあげた天然の鹹水を煮つめ結晶させたもので,現在の自貢市周辺で採取される塩である。最初,〈自流井〉すなわち塩水が自然に流れでる井戸からとられたもので,のち,地名となった。…

【長江】より

… 江漢平野や岷江などの開発により,長江中流や巴,蜀すなわち四川盆地は秦の中国統一を支えた。この間,戦国時代末には沱江流域の自流井(自貢)では塩井が掘られ,天然鹹水(かんすい)を煮つめ〈井塩〉をとりはじめている。また,三国の蜀代には〈火井〉すなわち天然ガス井も利用されている。…

※「自貢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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