船瀬(読み)ふなせ

精選版 日本国語大辞典 「船瀬」の意味・読み・例文・類語

ふな‐せ【船瀬】

〘名〙 船舶が、風や波を避けるためにとまる所。船の碇泊所。船どまり。船津
万葉(8C後)六・九三五「名寸隅(なきすみ)の 船瀬(ふなせ)ゆ見ゆる 淡路島 松帆の浦に」

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デジタル大辞泉 「船瀬」の意味・読み・例文・類語

ふな‐せ【船瀬】

船が風波を避けるために停泊する所。
「行き巡り見とも飽かめや名寸隅なきすみの―の浜にしきる白波」〈・九三七〉

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改訂新版 世界大百科事典 「船瀬」の意味・わかりやすい解説

船瀬 (ふなせ)

船舶の停泊する海浜の舟溜(ふなだまり),浅瀬。船居(ふなすえ)ともいう。自然の海岸地形や砂州を利用するとともに,人工の石椋(いしくら),築島(つきしま)などによって風波の難を防いだ。この点,ほぼ(とまり)と同義であるが,やや人工的施設というニュアンスが強い。中世以降の地名用語としては泊のほうが一般的となる。行基の創設した東部瀬戸内海の五泊の船瀬は有名であり,しばしば〈石頽(くず)れ砂漂う〉という被害をうけたが,造船瀬使や国司の管轄下,勝載料(津料)の徴取や船瀬庄田(造船瀬料田)の経営などによって修復・維持された。その他,789年(延暦8)に播磨国美囊郡郡司が水児(かこ)船瀬に稲6万束を献じて叙位されたような在地土豪の献物による修築や,平氏政権による大輪田船瀬再建のような諸国平均役による修築が行われる場合もあった。また船瀬の修造は大きな宗教的善行とされており,〈船瀬沙門法鏡〉(《日本書紀》持統紀)や,〈石を負い鍤(すき)を荷(にな)って〉魚次船瀬を修築した東大寺僧賢和(三善清行《意見封事十二箇条》)などの活動が知られている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「船瀬」の意味・わかりやすい解説

船瀬
ふなせ

律令制時代,船が停泊するところをいった。古く『万葉集』にみえ,10世紀初頭までは大輪田船瀬などといったが,平安時代後期以後は一般に泊 (とまり) と呼ぶようになった。船を修理,造築する費用のために造船瀬料田,船瀬功徳田が設定された。

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