花折峠(読み)はなおれとうげ

日本歴史地名大系 「花折峠」の解説

花折峠
はなおれとうげ

途中とちゆう集落から北の安曇あど川渓谷に抜ける若狭街道の峠。下立おりたて山西麓、現在の伊香立途中いかだちとちゆう町と葛川坂下かつらがわさかした町の境に位置し、標高五九一メートル。「輿地志略」は「或は高坂峠ともいふ、途中村より半里也、轆轤谷よりは九町許北也、是途中より葛川明王堂へ至る路の中間也、此峠に手向の花とて樒あり、葛川滝入の行者こゝにして件の樒を折取つて斎戒す、是より奥、葛川までに樒かつてなし、故にこの処にて折りとるゆゑ花折峠とはいふ也」と記す。

建保六年(一二一八)一一月日の葛川常住僧賢秀陳状案(葛川明王院史料)に「自御堂南限花折谷」とある。文保二年(一三一八)成立の葛川彩色絵図(葛川明王院蔵)では、「途中里」から「甲坂堂」に至る間の「花折谷」の手前に「奉山神花折在所也」と注記され、葛川参籠の際に山神に捧げる花は、峠への登り口において手折られていたことがわかる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「花折峠」の意味・わかりやすい解説

花折峠
はなおれとうげ

滋賀県中西部、大津市の葛川坂下町(かつらがわさかしたちょう)と伊香立途中(いかだちとちゅう)町の境にある峠。「はなおりとうげ」ともいう。丹波(たんば)高地と比良(ひら)山地の間を流れる安曇(あど)川と和邇(わに)川との分水嶺(ぶんすいれい)にあたり、標高591メートル。この地を南北に走る断層花折断層という。現在、国道367号が通じるが、この道路は古くから京都若狭(わかさ)を結ぶ交通路として利用され、街道屈指の難所として知られた。1975年(昭和50)トンネル開通し交通条件は改良された。

高橋誠一

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「花折峠」の意味・わかりやすい解説

花折峠
はなおれとうげ

「はなおりとうげ」ともいう。滋賀県中西部,比良山地にあり,大津市内の途中と葛川を分つ峠。標高 591m。葛川明王堂への行者がこの峠でシキミを折取って斎戒に使ったことからその名が生じた。京都から朽木を経て福井県にいたる間道の重要な峠。またこの峠を花折断層が南北に通る。 1975年峠下にトンネルが完成

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