花織(読み)はなおり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「花織」の意味・わかりやすい解説

花織
はなおり

沖縄本島の読谷(よみたん)・首里(しゅり)、与那国(よなぐに)島などや、奄美(あまみ)大島で生産される浮織の一種。製織の途中で、糸を組織から外すことで、簡単な浮織が生まれるので、このような方法で自然に発生した紋組織である。単純な文様なので、変化をつけるために互(ぐ)の目(め)に配置される。読谷では、文様の部分のみに浮糸を用いた浮織で、絣(かすり)文・花文のあるものをいう。地色は白と紺で、色糸で文様を織り込む、絹または木綿織物。与那国島では、地は麻、芭蕉(ばしょう)、木綿などによる。文様を緯(よこ)の浮糸で織り込み、互の目の連続文様としている。もとは衣料として上流階級晴れ着などに織り出され、花倉織などは絽(ろ)の地と併用するなど、手のこんだものがつくられた。花織の細帯(ミンサとよぶ)は、経糸(たていと)で文様を織り、独特の風合いをもつ。1999年(平成11)與那嶺貞(よなみねさだ)が国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。

[角山幸洋]


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改訂新版 世界大百科事典 「花織」の意味・わかりやすい解説

花織 (はなおり)

沖縄の紋織の一種。沖縄では〈はなうい〉と呼んでいる。読谷山花織(ゆんたんざはなうい),読谷山花織ミンサー,首里花織,首里花倉織,竹富花織,与那国の板花織(花織手巾(はなういてさじ)),花織ドタティの総称である。技法は浮織の一種で,素材には主として綿,絹を用いる。紺,茶地が多く白,赤,黄,緑の緯糸文様に絣を併用,浮柄に立体感があり華やかな味わいをもつ。15世紀初め,中国や南方貿易の拠点であった読谷村長浜港に南方から伝来した技術といわれ,按司(あじ)の座喜味城主,護佐丸によって家内工業化が図られた。琉球王府の御用布に指定され,特別の保護のもとに織られた。花織の着用は,王家以外は首里の貴族と読谷(よみたん)の住民にしか認められなかった。明治中期から衰えはじめ,1906年に途絶えたが,61年,村の有志によって復活し,愛好会から組合へと発展した。着尺(きじやく),帯,手巾,ミンサー帯などが織られている。
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世界大百科事典(旧版)内の花織の言及

【医学】より

…また,それらが触媒となって,医療技術も大きく進歩した。たとえば紀州の華岡青洲は,マンダラゲを主成分とする麻酔剤を開発して,乳癌の手術などを多く実施した。その門人本間棗軒(1804‐76)は,四肢の切断や陰茎切断などの困難な手術にも成功している。…

【癌】より

… 日本では,江戸時代に癪(しやく)・積聚と呼ばれた内科疾患に,胃癌のような悪性腫瘍が含まれていたと思われる。膈噎(かくいつ)といわれた食道狭窄症には食道癌もあったし,舌疽(ぜつそ)といわれたものはほとんどが舌癌であったと思われるが,江戸時代にもはっきり認識されていたのは,華岡青洲の麻酔手術で名高い乳癌であった。また1915年に山極勝三郎と市川厚一がウサギの耳にタールを塗って皮膚癌の発生に世界で初めて成功したことは注目される。…

【外科】より

…サルファ剤の発見,A.フレミングによるペニシリンの発見,それに続く種々の抗生物質の発見・合成は,今日の外科無菌手術に大きな進歩をもたらした。1805年(文化2)世界に先駆けて華岡青洲が曼陀羅華(まんだらげ)(チョウセンアサガオ)を主成分とした麻沸湯による全身麻酔で乳癌の手術に成功した。それから約40年後アメリカのW.T.G.モートンらがエーテル麻酔に成功,以来吸入麻酔用ガスの開発は近代麻酔学の基礎となった。…

【手術】より

…1649年(慶安2)出島に到来したオランダの医師カスパルはフランスの外科医パレの医学を伝えたが,彼の教えた医学はカスパル流外科として知られる。 1774年(安永3)に杉田玄白,前野良沢らによってクルムスJ.A.Kulmusの解剖書を翻訳した《解体新書》が刊行されたが,それから31年後の1805年(文化2),華岡青洲は曼陀羅華(まんだらげ)(チョウセンアサガオ)を主とした麻沸湯による全身麻酔下での乳癌手術に成功している。これはW.T.G.モートンらのエーテル麻酔に先立つこと約40年であった。…

【麻酔】より

…モートンが麻酔の父と呼ばれるゆえんである。日本では1804年10月13日華岡青洲が通仙散(麻沸湯)を用いて全身麻酔下で乳癌の手術に成功した。これらが全身麻酔下で行われた手術の初めである。…

※「花織」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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