花間集(読み)かかんしゅう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「花間集」の意味・わかりやすい解説

花間集
かかんしゅう

中国の歌謡文学である唐末・五代の詞の代表的詞集。10巻。後蜀(こうしょく)の趙崇祚(ちょうすうそ)の編。18詞人の詞500首を収める。18人中13人までが前後両蜀の詞人で、南唐の詞人は1人も含まれない。巻首には『花間集』詞人の1人、欧陽烔(おうようけい)の序文を載せる。これはもっとも早い時期の詞論として貴重である。温庭筠(おんていいん)を筆頭に、以下皇甫松(こうほしょう)、韋荘(いそう)と作品を並べるのは、生存年代の先後によるものと思われる。作品は温庭筠の66首を最高に、孫光憲(そんこうけん)の61首、顧夐(こけい)の55首、韋荘の48首がこれに続く。作品はそのほとんどが男女の離情や女性の美態を歌い、用語は艶麗(えんれい)を極める。歌われる季節に春が圧倒的に多いのはこの期の詞の特色である。

青山 宏]

『倉石武四郎編『中国古典文学大系20 宋代詞集』(1970・平凡社)』『中田勇次郎著『漢詩大系24 歴代名詞選』(1965・集英社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「花間集」の意味・わかりやすい解説

花間集
かかんしゅう
Hua-jian-ji

中国,五代十国に編纂された詞集。後蜀の趙崇祚の編。 10巻。天福5 (940) 年頃成立。温庭 筠 (おんていいん) ,韋荘 (いそう) ら唐末,後蜀の 18人,500首の詞を詞人別に編纂したもの。短い小令で閨情をうたった艶麗な詞が大部分を占める。韋荘の作品を除いては,ほとんどが温庭 筠の亜流といえるが,収録された詞人は合せて「花間派」と呼ばれた。その後の詞の本流となった婉約派の詞風の原点ともいうべき選集であり,いくつかの注釈書もつくられた。

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