こけ【苔】 の 衣(ころも)
※後撰(951‐953頃)雑三・一一九六「世をそむく苔の衣はただ
ひとへ貸さねばうとしいざ二人寝ん〈
遍昭〉」
② 苔のおおっているさまを衣に見立てていったもの。こけごろも。
※新古今(1205)雑中・一六二七「
白露のあした夕べにおく山のこけの衣は風もさはらず〈
如覚〉」
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デジタル大辞泉
「苔の衣」の意味・読み・例文・類語
こけ‐の‐ころも【×苔の衣】
1 地を覆う苔を衣にたとえていう語。こけごろも。
「白露の朝夕べにおく山の―は風もさはらず」〈新古今・雑中〉
2 僧・隠者などの着る粗末な衣服。こけごろも。こけのたもと。こけのきぬ。
「男に侍りし山伏の―をぬぎ」〈宇津保・国譲下〉
[補説]書名別項。→苔の衣
こけのころも【苔の衣】[書名]
鎌倉時代の擬古物語。4巻。作者未詳。文永8年(1271)以前の成立。人生の無常を主題に、父子3代の恋愛と悲運を描く。
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苔の衣
こけのころも
鎌倉時代の擬古物語。4巻。1271年(文永8)以前の成立。3世代にわたって恋愛の苦悩を描いた中世的な無常色の濃い作品。権大納言(ごんだいなごん)の西院(さいいん)の上腹(うえばら)の姫君は継母(ままはは)東院の上に養われ、関白の息中納言と障害を乗り越えて結ばれ、男君、女君を残して死ぬ。中納言(ときに右大将)は女宮の降嫁を辞退して失踪(しっそう)する。女君は東宮の女御(にょうご)になるが、兵部卿(ひょうぶきょう)の宮がこれと密通し、死霊となって取り憑(つ)く。女御(ときに中宮(ちゅうぐう))の悩乱を聞き、苔の衣(僧衣)に身を変えた中納言は祈祷(きとう)していやし、歌を遺して姿を消す。
[三角洋一]
『久曽神昇解題『苔衣物語』上下(1954・古典文庫)』
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苔の衣
こけのころも
鎌倉時代の擬古物語。作者未詳。4巻。前半は『落窪物語』などに似た継子物 (→継子話 ) ,後半は『源氏物語』などの影響の濃い恋愛物語。内大臣の娘で継母に養われ,のち右大将と結婚する西院の姫,愛する妻を失ったために子を残して横川に遁世する右大将,あるいは東宮に入内した恋人をあきらめることができずに苦悩が重なって病没するが,なお,もののけとなって恋人の身辺に現れる兵部卿宮らがおもな作中人物。物語の一部を独立させて宇治大納言物語と称することがある。
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