若干・幾許(読み)そこばく

精選版 日本国語大辞典 「若干・幾許」の意味・読み・例文・類語

そこば‐く【若干・幾許】

〘副〙 (副詞「そこば」に副詞語尾「く」の付いたもの。名詞的に用いられる場合もある)
① 数量などを明らかにしないで、おおよそのところをいう語。いくらか。いくつか。
※四分律行事鈔平安初期点(850頃)「爾許(ソコハク)
※宇津保(970‐999頃)吹上下「源氏殿上ゆるされて、御前にめして御覧ず。そこばく選ばれたる人々に劣らず」
② 数量の多いさま、程度のはなはだしいさまを表わす語。多く。たくさん。はなはだ。たいそう。
※伊勢物語(10C前)七七「そこばくの捧げ物を木の枝につけて」
※源氏(1001‐14頃)行幸「そこばく挑みつくし給へる人の、御かたち・有様を見給ふに」
[語誌](1)「そこば」に対する「そこばく」は「ここば」に対する「ここばく」の関係に等しい。
(2)平安時代には、数量の多いさまを表わす語として、「そこら」「ここら」が和文に用いられるのに対して、「そこばく」は「若干」等の訓読語として用いられた。和文では、「ここら」と「そこら」に「こ━そ」の指示領域に関係した使い分けが見られるが、訓読文では「そこばく」が専ら用いられ、多く「そこばくの」という形で連体修飾語となる。
(3)平安時代末から中世にかけては「ここら」「そこら」の用例数は次第に減るが、「そこばく」は引き続き用いられ、「そくばく」「そこそばく」といった形も生じた。

そくば‐く【若干・幾許】

〘副〙 (名詞的に用いられる場合もある) =そこばく(若干)
書紀(720)欽明即位前(寛文版訓)「天国排開広庭皇子、即天皇位(あまつひつき)しろしめす。時年(みとし)若干(ソクハク)
太平記(14C後)八「廻りける勢に、後陣を破られて、寄手若干(ソクバク)討れにければ」

そこ‐ば【若干・幾許】

万葉(8C後)四・七〇六「はねかづら今する妹は無かりしをいづれの妹そ幾許(そこば)恋ひたる」

そこば‐こ【若干・幾許】

〘副〙 「そこばく(若干)」の変化した語。〔大般若経字抄(1032)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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